ZOO2 乙一


2006.8.28 1と比べると明らかなパワーダウン 【ZOO2】

                     
■ヒトコト感想
前作より明らかにクオリティが墜ちている。ZOO1に面白いものを詰め込んで、同じレベルのものが収録されていると思わせZOO2を買わせる。もともとは1つの短編集だったものを二つに分けるには、いろいろと政治的な思惑があるのがありありと読み取れた。ホラーでもなく、ミステリーでもなく、読み終わってから心に残るものがまったくなかった。前作がすばらしいできだっただけに、期待もしてしまう。期待を裏切られたというより、マンマと策略にはまってしまったという感じだ。

■ストーリー

目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など、いずれも驚天動地の粒ぞろい6編

■感想
笑いを狙っているのだろうか、明らかに1とは雰囲気が違う作品が目立つ。もしかしたら読んだ時の精神状態に影響するのかもしれないが、心に残るような作品は皆無であった。そんな中でもかろうじで印象に残っているのは「神の声」という作品だ。1の作品にあったようなダークでそして悲しい物語の中にも教訓めいたことや、人の心の奥底を覗き込むようなそんな気持ちになってくる。この部分だけ乙一節が炸裂しているようだ。

中途半端な笑いや奇をてらうような作品。それらが全て悪いとは言わないが、乙一の作品を買う人は乙一らしい作品を求めているのが大多数だと思う。本作が乙一らしいと言われてしまうと、何も言えない。本作は乙一の最新の文庫であり、それなりに知名度もあるので本屋に平積みされている。いつもの乙一節を楽しみに読むと、僕はかなり裏切られた気がした。

「落ちる飛行機の中で」などは乙一には珍しく楽屋ネタ的なことまで書かれている。短編集のなかでの書き下ろしのように手を抜かれた作品と、自分で本作の書き下ろしは駄目だと暴露するような感じだ。

自分の目が肥えたのか、それとも乙一の作品に慣れてしまって新鮮味がなくなったうえでの思いなのか。前作が非常にすばらしかったために本作との埋めようのないギャップが最後まで悔やまれる。




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