夢で会いましょう 


2008.7.30 思わず口元が緩む 【夢で会いましょう】 HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
糸井重里と村上春樹、二人のショートショート。村上春樹の不思議な雰囲気には慣れっこなのだが、糸井重里までこんな雰囲気の文章を書くとは思わなかった。正直、最後のマークを見るまでは、どちらの作品なのかまったくわからなかった。それほど似通っているのだが、結局は不思議で、そしてちょっとだけほのぼのとするような話ばかりだ。もちろんいつものように大半は良く意味のわからないものなのだが…。たまに登場するヤクルトスワローズに関する詩だけはものすごいインパクトがある。特別な思い入れはないのだが、その情景が思い浮かび、そしてニヤリと口元を思わず緩めてしまう。電車の中などで読むのには丁度良い作品なのだろう。

■ストーリー

強烈な個性と個性がぶつかりあう時、どんな火花が飛び散るか――それがこの本の狙いです。同時代を代表する2人が、カタカナ文字の外来語をテーマにショートショートを競作すると、こんな素敵な世界があらわれました。さあ、2種類の原酒が溶けあってできた微妙なカクテルの酔い心地をじっくりとどうぞ。

■感想
カタカナ文字の外来語をあいうえお順に並べ、そしてショートショートを競作している。競作といっても二人で何か話し合いながらというのではなく、お互いが勝手に好きなように書いている。外来語をテーマとして思うがまま好きなように書いている。何の制約もなく、自由に、そして書きたいことを好きなだけ書いている。そんな状態でありながらも、それなりに面白くできているからすごい。曖昧なテーマであればあるほど辛いような感じがするのだが、さすがにプロとなるとサラリとなんでも書けてしまうのだろう。

時々ふざけているとしか思えないショートショートもでてくる。中でも一番インパクトがでかく、衝撃的だったのはヤクルトスワローズの詩だ。まず、なぜマイナーなヤクルトなのだろうか。そして、なぜあれほど的確に、そしてシニカルな詩を書けるのだろうか。読んだ瞬間、頭の中にはその情景が浮かび上がり、思わず口元がニヤつくのを隠すことができなかった。本作を読んだのが電車の中だったので、窓に映りこむ怪しいニヤケ顔に、まわりの乗客も少し引いていたかもしれない。

短いちょっとした空き時間にサラリと読めるという利点がある反面、読み終わるとほとんど印象に残ることはない。大量のショートショートを量産する変わりに、誰の心にも残らない。残るのは強烈なインパクトがある詩のような変り種だけだ。なんとなくだが、本というよりも、ラジオから流れてくる放送を聴いているような気分だろうか。ぼんやり車を運転しながらラジオを聞き流す。ちょうど、同じようにぼんやりと読むような感じだ。もちろん、人によっては一つ一つ丁寧に読み込む人もいるだろう。しかし、僕自身はそうではなかった。

気張らずに軽く読めるので手は出しやすいだろう。



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