勇気凛凛ルリの色 四十肩と恋愛 


2008.3.24 回し蹴りが一発もない 【勇気凛凛ルリの色 四十肩と恋愛】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
作者のエッセイ第二弾。前作の自虐的お笑い要素の強いエッセイと比べると、本作は多少お笑いの部分が押さえられている。それはつまり面白さが半減していると言い換えることもできる。どうも時事的な話題が多い本作。沖縄米軍基地問題や、住専問題など、その当時話題になったことを本作でもしっかりと抑えているのだろう。それはそれでいいと思う。ただ、作者のエッセイで求めるのは、強烈なインパクトをもった自虐的ギャグと、編集者、その他の人々に与える強烈な口撃だろう。それらがなりを潜めた証拠に、あれほど繰り出されていた回し蹴りが本作ではまったくといっていいほど登場しなかった。

■ストーリー

キワモノである。下品である。悪意と偏見に満ちている。全然やすらぎを与えない。エッセイの本義に悖る―と自らの文章をも毒舌をもって語る人気の直木賞作家が、喜怒哀楽を包み隠さず吐き出した痛快エッセイ。実は読むと、やさしい人間臭い視点で世の中を捉えた、涙と笑い、感動がいっぱいつまった一冊。

■感想
時系列的に考えると、ちょうど本作を執筆している時期は作品が爆発的に売れ出す時期なのだろう。エッセイの端々に、それをにおわせる部分があり、大作家になりつつあるというのを感じることができる。ただ、それだけに、今までのお笑い要素が減ってきたのは残念でならない。多少、身内ネタ的な話が入ったり、下品を通り越して何も感じなくなるような部分があったりと、楽しませてくれるのは相変わらずだがその絶対数は減っている。ネタ切れなのか、編集サイドの判断なのか、それは謎だが。

本作の中で特に印象深いのは、タイトルにもなっている四十肩の部分と、恋愛小説を書くというくだりである。四十肩というのが誰にでもおとずれる宿命であり、避けることができないというのをはじめて知り、その悶絶するほどの痛さは、作者のユーモア溢れるたとえで十分知ることができた。ただ、この部分は、一般的な雑誌などでも知ることができそうな程度としか感じなかった。元自衛官である作者でさえ四十肩になる現実を知らされると、ちょっと自分がどうなるか、そのあたりはかすかな不安を覚えた。

作者は恋愛物が書けないと言って久しいが、確かに今まで作者の作品で恋愛系の作品を読んだことがない。ただ、それに近いものは読んだことがある。特別違和感を感じることなく読めるのだが、作者の風貌を思い浮かべると、ちょっとイメージがわかないのは確かだ。本作の表紙もそうだが、ハゲでメガネでデブという風貌。本作にもそれは絶対的な欠点だと語ってはいるが、それだけで作風に関してある程度損をしている部分があるのは確かだ。しかし、そのぶんをエッセイで挽回しているというのはあるだろう。

相変わらずの面白さは変わらないが、少し堅く感じるのは、堅いテーマのエッセイが多かったせいだろう。



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