勇気凛々ルリの色 満天の星 


2007.11.26 自虐的ギャグはおさえ気味 【勇気凛々ルリの色 満天の星】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
前回読んだエッセイは非常に自虐的ギャグを盛り込んだ面白いものだった。さすがに四作目ともなると、ネタ切れなのだろうか、自虐的なハゲ、メガネ、デブ、チビといった話題は少なくなっている。そのかわりに小説家の仕事の大変さが存分にアピールされている。多少大げさに書かれているのだろうが、それでも四六時中机にかじりついているという印象をもったのは確かだ。うそかホントか、このIT全盛の時代に、原稿用紙に手書きというのにも驚いた。

■ストーリー

パリに行った。自分の作品の映画も出来た。そして、ガッポリ税金も納めた…。このエッセイは、無名の物書きが小説家になるまでのサクセス・レポートとして読んでほしい。さあ、泣いて笑って、みんなでサクセスしよう!惜しまれつついったん連載を終了した、不滅の痛快エッセイ、とりあえずの最終巻。

■感想
小説家という仕事はあらためて大変だと思った。何が大変かというのは、本作を読めばすぐにわかる。心血注いで書いた小説がやっとのことで日の目をみたと思ったら、その半分以上は税金として国に取られていく。客観的に読むと、大変だという気持ちが強いはずなのだが、作者のサービス精神旺盛なエッセイとしては、同情よりもお笑いを誘発させるような流れとなっている。

作者のエッセイはいくつか読んだが、他のものと比べると、いくぶん硬いような気がした。テーマがそうなのだろうか、それとも、路線変更なのだろうか。中には下品な話もあるが、基本的に小難しい話が含まれている。軽く読めるというイメージで読むと、ちょっとびっくりするかもしれない。相変わらず自虐的な部分は多いのだが、基本は小説家という仕事の崇高な部分が垣間見えているような気がした。

この感想を書いていて、今、気がついたのだが、いつもと違うと感じたのは、アウトロー時代の話がないからだ。浅田次郎といえば、おおっぴらには言えない仕事をしてきており、それを面白おかしく描くというイメージがあった。今回はそれがまったくといっていいほどない。イメージチェンジというよりも、ネタ切れと言ったほうがいいのかもしれない。

この前偶然、テレビで作者を見たが、イメージしていたよりもすっきりとしていた。もっと脂ぎった親父かと思ったが意外だった。このエッセイを読む限りは
油でギトギトした親父を想像せずにはいられなかったからだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp