2005.11.10 禁じ手を出した 【有限と微小のパン】
評価:3
■ヒトコト感想
かなりの長編。S&Mシリーズの締めくくりとして過去の印象深いキャラクターが勢揃いし
”すべてがFになる”で強烈な印象を残した「真賀田四季」が登場する。
ミステリアスな事件が次々に起こり、その元凶が真賀田四季というような流れになっており
結末がはっきりするまでは非常に興味深く、また集中して読むことができた。
しかし、結末に近づくにつれて事件のタネが明らかになってくると途端にテンションが下がってしまう。
僕的にはこの手のトリックは禁じ手だと思っているので、
それを使われたのにちょっとがっかりした。
■ストーリー
日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。
パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。
萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は……。
■感想
ここからはネタバレも含まれます。
真賀田四季博士が登場すると犀川と萌絵が色めきだち、読者としてもいったいどんなことをやるのかという
一種のワクワクした気持ちで読み進めることができた。
ソフトウェア開発会社が舞台となっているので当然のごとくバーチャルな世界が登場し、
そこで起きる事件がまさにバーチャルを逆手にとったとても旨いやり方だと思った。
バーチャルな世界を現実にするというのは誰でも想像することだが、それを実現できないまでも
真賀田四季ならばそれも可能にするような能力を持っていそうでならない。
作者自身も真賀田四季に対しての思い入れは並々ならぬものなのだろう。
あつかいが犀川と萌絵を除けば、今回に限れば存在感だけでは犀川も上回っているかもしれない。
長編であるが故に、1つの事件だけでは終わらせることができずに、次々と新しい事件が起こるのだが
その一つ一つにすべて真賀田四季が関わり、何かしら裏で糸を引いているように思えてならなかった。
そう思わせるような流れに意図的にしているのだろうが、真賀田四季がでてくることによって
長編の中だるみがなくなり、緊迫感を持続することができていると思う。
しかし、結末では禁断の「実は警察も含めて全ての人がグルだった」
という掟破りの技をだされたのでそれを読んだ瞬間に、途端にテンションがさがり、
その後それを利用した事件が実は起きていたと言われてもちょっと興ざめしてしまった。
確かに普通に考えればあり得ない事件なので、このオチにしたのかもしれないが、今までの森作品では
ありえないような事件でも巧実なトリックを絡めてすばらしいミステリーに仕上げていたのに
今回だけは全てをひっくり返す安易な方法を選んでしまったような気がする。
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