ワールド・トレード・センター


2006.10.31 911を主観的な見方で 【ワールド・トレード・センター】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
911を描いた作品にはユナイテッド93がある。本作とはまったく別の作品であり、雰囲気も思想も異なっている。で、どちらが好みかといえばユナイテッド93の方が好みだ。なぜかと言うと本作にはテロで被害を受けた警察官がメインであり、その家族との絆が描かれている。そのせいか、とても小さな物語に思えてしまった。確かに当事者達の辛さや悲しさは想像以上だろう。しかし同じような気分になった人はごまんといるはずだがそれ以外の出来事がまったく無視されているような気がした。当人達はそのとおりだろうが、見ている者まで、そこだけが全てで、それ以外は何も存在しない。そんな気分にさせられてしまう。

■ストーリー

2001年の9.11同時多発テロで標的となった、NYの世界貿易センタービル。本作は、崩壊したビルに生き埋めになった2名の警官の奇跡的な生還を、実話に基づいて描いた感動作。港湾警察のジョンとウィルは、飛行機が激突した貿易センタービルに急行。ビルの1階に入ったところで、ガレキの下敷きになってしまう。無念の死を迎える同僚や、心配で取り乱す家族など、いくつものドラマが進行するなか、ジョンとウィルは励まし合って助けを待つ。

■感想
ユナイテッド93が客観的な作品であるとすれば、本作はものすごく主観的だ。当事者達の家族やその仲間達に焦点を当てているのでそれは当然のことでそれを目的として作られたのだろう。実話を元にした感動作。おそらく見ている人たちは心のどこかでこの警官達は助かるものだとという気持ちがありそれでもドキドキしながら見ているのだろう。感動的で誰もが涙する作品。911を体験した人ならば感情移入もたやすいことでこれがハッピーエンドでなければならない理由でもある。

911というテロを理解する前にWTCに救助に向かった人達と、それを知っていて見る観衆達。
アメリカらしいヒーロー崇拝というか、それらの人以外はそこには存在しないような描かれ方をしている。二つの家族に焦点が当てられ、家族達が苦悩する姿が描かれている。それはヒーローとして殉職するかもしれないという悲しさと、それに対する同情心をくすぐっている。ただしそれは通り一辺倒の描き方で、他の側面はまったく描こうとはしていなかった。家族が必死になるのは当然としても、他に犠牲者は沢山存在し、その場で苦しんでいる。しかしそれはほとんど感じることができなかった。

衝撃度でいえば断然ユナイテッド93だろう。いくらWTCから人が降ってこようが、ヒーロー達が現場へ向かう前にはほとんど気にならない。ノンフィクションのはずだが、やけに映画的演出として見えてしかたがなかった。これから死地へ向かう精鋭たち。そこには辛く厳しい苦難が待ち構えている。警察官たちのお互いの進密度もそれほど印象に残っていない。あるのは家族達が泣き叫び、不安で右往左往する姿だけだ。

911という大規模なテロがどんな意味を持っているのか、その意味をアメリカ国民の中で風化させない効果はあるのかもしれない。しかし、テロを知らない世代が見て衝撃を受けるのは明らかにユナイテッド93の方だろう。



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