べクシル-2077日本鎖国-


2008.3.6 絵柄に違和感を感じつつ 【べクシル-2077日本鎖国-】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
この独特なCGはなんだろうか。アニメというにはリアルであり、実写を目指したとは思えないほどアニメっぽい。中間的絵柄なのだろうが、これが始から終わりまで気になってしかたがなかった。近未来的な映像としてコンピュータの世界を描くのには、この手法は素晴らしいのだろう。ただ、人間を描くには向いていない。能面のような表情と体の末端、手や顔の動きがぎこちなくてしょうがない。これならば普通のアニメにしてくれた方がすんなりと物語に入り込めた。中途半端が致命的だろう。ただ、ストーリーや絵柄に難があるとしても、結末のスピード感溢れる映像ははらはらどきどきした。実写では描けない、ありえないスピードでの動きはとてもすばらしい。

■ストーリー

日本のハイテク技術は危険視されるようになり、国際規制の対象となった。これに猛反発した日本は国連を脱退。そして2067年に得意のハイテクを駆使して鎖国を強行する。それから10年間、完全なる鎖国により日本の実像は厚いベールに隠された。そして2077年、日本の不穏な動きを察知し、特殊部隊が送り込まれることに。なんとか日本に潜入した女性兵士べクシルは、異様な光景を目撃する…。

■感想
物理的にもテクノロジー的にも鎖国された日本。その日本に潜入するアメリカ人。この図式を日本映画で作るというのはちょっと意外だった。ただ国籍的な話でいうと、日本人だろうがアメリカ人だろうがまったく区別なく、言葉的にも何の違いも無い。国の違いというのをほとんど意識することがない。日本が優れたテクノロジーを持ち、誰も手出しすることができないアンタッチャブルな国家を作るというのは、イメージしやすいだろう。ロボットの輸出大国となるのも十分うなずける設定だ。

日本に開国を迫る黒船のごとく、潜入する特殊部隊。ストーリー的には面白みがない。主人公であるベクシルが物語りの中でそれほど重要な位置を占めていないからだ。ただ、そこにいるだけ、その他の重要人物たちの問題からは、蚊帳の外にいる主人公というのもどうだろうか。感情移入しがたい絵柄とあいまって、どこか紙芝居を見ているような、物語としての厚みが感じられなかった。

絵柄の問題があるにせよ、スピード感溢れる映像はすばらしい。序盤のバイクを追うシーンや、終盤の大和重工に乗り込むシーンなど、まさにアニメだからこそだせたスピード感だろう。狭い通路の中、閉まる扉に猛スピードで突っ込み、閉まる直前に通り抜ける。なんだか初代スターウォーズを思わせるような、ハラハラドキドキとしたシーンでもある。そして、鉄くずを食い尽くす巨大な物体が迫りくるシーンの強烈なまでの存在感。この二つのシーンは本作の一番の見所といっても良い。

ストーリーだとか、人物の絵がどうとか言うよりも、まずはこの二つのシーンを見てほしい。普通のアニメでは表現できないであろうシーンだと思う。日本のアニメの代表といえば宮崎アニメなのだろうが違ったベクトルでも、うまくやればかなり素晴らしいものができるという、可能性を感じさせる作品だろう。



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