使いみちのない風景 


2008.2.8 本作の写真こそ使いみちがない 【使いみちのない風景】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
村上春樹独特のエッセイに写真が添えられているだけの作品。その写真とエッセイがリンクしているかというとそうではない。ただのページ稼ぎか、もしくは何にも使われない写真に日の目を見させるためにのせたというところだろうか。エッセイ自体はいつもどおりの村上春樹流だ。のんびりとしながらも、どこか視点が一般人とは違う。たまに、はっとさせられるような言葉がでてきたかと思えば、だらだらとした印象しか与えないような言葉がつづられている場合もある。読み終わったあと、タイトルは写真のことを言っているのだと勝手に判断した。

■ストーリー

僕らの中に残っているいくつかの鮮烈な風景、でもそれらの風景の使いみちを僕らは知らない―無数の旅を重ねてきた作家と写真家が紡ぐ、失われた風景の束の間の記憶。文庫版新収録の2エッセイを付す。

■感想
絵本であったり挿絵つきの小説などは、かならず絵と文章につながりがある。最近読んだカッシーノ!も世界各地のカジノを渡り歩き、その雰囲気を書き綴る作品なのだが、カジノやヨーロッパのすばらしいホテルの写真はかならず文章とリンクしていた。そう考えると、本作には写真と文章のつながりがまったくなく、何のための写真なのかまったくわからない。「使いみちのない風景」というタイトルどおり使いみちのない写真を人気作家の作品にのせてしまえというように思えて仕方がない。

旅好きというイメージのある作者。そんな作者が旅について語り、また、それと共に小説に対する思いもつづっている。旅のウンチクを語ったり、小説とは何かということを語るのではなく、作者の旅や小説に対するスタンスのようなものを感じとることができた。特に小説については、ファンならば喜びそうな大ヒット小説ができたきっかけや、好きな作品はこうやってできたなど、事細かに書かれているわけではないが、最後に「僕はこのときなになにを書き終えた」などとあると、ちょっとうれしくなってしまう。

はっきり言えば写真は邪魔だ。ただでさえページ数の少ない本作。見開き半ページに写真を費やし、残りの半ページに空白だらけのエッセイが鎮座する。当然そうなってくると、ものすごく簡単に読むことができる。実質十五分程度で読み終わったのだろうか。正直、この手の作品にはまったく満足できない。なんだか少し損した気分になるからだ。本を読むときはある程度の時間、作品に没頭できるということを重要視しているからだろう。

タイトルはしゃれているが、それがそのまま作品の中にちりばめられているとは思わなかった。



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