椿山課長の七日間


2007.11.29 かすかに泣けてくる 【椿山課長の七日間】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作と設定が異なる部分があるが、それらは許容範囲だろう。基本的に原作の雰囲気そのままに、あの世から蘇った中年男性が美女に生まれ変わりあたふたするというのが、売りなのだろう。ただ、細かな設定が異なり、一つ一つのエピソードにも時間がさけないため、全体的に駆け足な印象がある。明るいタッチで描かれてはいるが、内容は良く考えれば非常にディープでショッキングな部分もある。ただ、中年男が美女に変身し、その戸惑いと共に面白さが深刻さを中和してくれる。やくざの親分のエピソードはありきたりだが、ちょっと泣けてきてしまった。

■ストーリー

社運をかけたバーゲンセールの真っ最中、勤務先のデパートで脳溢血のため突然死した椿山課長(西田敏行)。やり残した仕事や愛する家族、21年分が未払いの住宅ローン……あまりに未練がありすぎてこれじゃあ死んでも死にきれない!しかし、天国と地獄の中間地点にある中陰役所で、三日間だけ現世に戻ることを許された椿山は、正体がバレないように生前とは似ても似つかない絶世の美女、和山椿(伊東美咲)となってよみがえる。「あの世」から「この世」に舞い戻った椿山は、家族の秘密と親子の愛情、そして秘められた想いを初めて知る。椿山と同様に、殺されたヤクザの親分・武田もまた三日間だけのよみがえりを許される。美貌のヘアスタイリスト・竹内へと姿を変えて……。

■感想
あの世から転生したのは三人おり、それぞれが別々の物語を持ってはいるが、微妙に絡み合ったりもする。この三人の中でやくざの親分関係が非常に良かった。メインの和山椿役の伊藤美咲に比べるとやくざの親分役をやった成宮寛貴の演技がすばらしいからだろう。ありきたりな内容かもしれないが、複雑な感情と、ありえないようなSFな気分も手伝って、かなり秀逸なエピソードだと思った。

メインの椿山課長にはいくつかの衝撃的な告白じみた部分がある。多少コメディチックで面白さを表現しているが、内容は非常にディープだ。
現代社会の問題を如実に表すように、どこの家庭にもありそうな(ないか)問題を描いている。死んだあとにこんな衝撃的事実を知らされて、成仏できないかと思うが、そこはとてもうまく処理されている。原作にくらべると、転生の目的があいまいで、深刻度も異なってはいるが、全体的なバランスはとてもすばらしく、きれいにまとまっている。

自分とはまったく似ても似つかない人物に転生するという非常に難しい役柄をどうこなすか。本作はとても俳優の演技力が問われる作品だと思う。そして、それを見事に演じきっているのもすばらしい。主役はもちろん、脇役たちも根本的には嫌な人物は誰一人おらず、心の優しさを感じる部分がたくさんある。

自分が死んだときは、はたして本作のように、現世に戻りたいと思うのだろうか。自分だったら、見たくないような気がする。本作のように、悪いことを知らされる場合もあるだろう。そして、ショックも受けるだろう。ありえないような展開と、衝撃的事実。すべてが丸くおさまる結末。これが安心して見られる映画なのだろう。



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