時生 東野圭吾


2005.9.1 明日だけが未来ではない 【時生】

                     
■ヒトコト感想
未来から来た青年は、実は自分の息子だった。
まあ、ありがちなタイムパラドックスもの?なのかもしれない。
だらしない父親を助ける未来の息子、さながらのび太を心配して未来から
送り込まれたドラえもんのようなパターンだ(笑)
ピンチに陥ると、どこからともなく仲間がやってきて助けてくれるという
ちょっとしたご都合主義的なところはあったが、それでも最後は
東野節炸裂で感動し、ホロリとさせられる場面がある。
明日だけが未来ではない」とても印象的な言葉だ。

■ストーリー
遺伝的な難病ゆえ、短い生涯を終えようとしているわが子。
「『生まれてきてよかったか』と尋ねたかった」とつぶやく妻に、主人公、宮本拓実は語りかける。
今から20年以上前に、自分は息子と会っていたのだと…。
定職を持たず、自堕落に生きていた若かりし日の拓実の前に、見知らぬ若者が現れる。
トキオと名乗るその青年とともに、拓実は、行方不明となったガールフレンドの捜索に乗り出した。

■感想
若い頃の拓実があまりにだらしなさ過ぎて、どうにも腹が立つというか
やりきれない気持ちになってくる。そこに現れるトキオがしっかりしていて
トキオの境遇を理解した上で読むとさらに拓実との落差を激しく感じる。
こんな奴がのちに立派な父親になるというのがにわかに信じられなかった。
この拓実を変える何が起こったのかと思わせるには十分過ぎる演出だ。

未来人お得意の結果を知った上でのギャンブルや、ピンチになったときには
かならずどこからともなく助けがやってくるなどというご都合主義の部分が目につき、
人質救出事件というのがあまりトキオ自体には関係がなかったというところが
少し残念だった。トキオ自信が何をやりたかったのか明確な目的がなく
ただだらしない父親を助けに来たのか?それとも父親に会いにきただけ
だったのだろうか?その疑問は最後まで解決することはなかった。

雰囲気的になんとなく秘密と同じような流れなのだが、秘密ほど泣けたり
感動することはなかった。過剰な期待というのもあったのかもしれないが
最後があまりにあっさりしすぎているような気がした。
最後のトキオの行動も、自分の母親の為だけではなくその他大勢の人を
助ける為にやったのだとしたら・・・・。
なぜこのタイミングでこの時にそんな行動にでたのかも疑問である。

そうは言っても劇的なラストや、衝撃的な事実などはなく最後もある程度周知の事実であることを
あらためて言葉にしているだけなのだが、何故かホロリときてしまう
それはおそらく作者の力量なのだろうが、分かっていても感動してしまう何かがある。




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