珍妃の井戸 


2007.9.18 蒼穹の昴は必須 【珍妃の井戸】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
蒼穹の昴の続編という位置づけだ。蒼穹の昴は壮大な中国の歴史を感じ取ることができ、スケールのでかい物語を楽しむことができた。その続編として本作が登場したのだが、思いのほか小難しかった。それぞれの関係者にインタビューし、珍妃の死の真相を探る。どこぞの古典と似たような手法だ。蒼穹の昴の登場人物たちがちょこちょこ登場し、懐かしさとその雰囲気を思い起こさせるが、本筋はあまり興味深いものではなかった。どことなくミステリーとしても弱いような気がした。

■ストーリー

列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝最末期の北京。その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?犯人探しに乗り出した日英独露の高官が知った、あまりにも切ない真相とは―。『蒼穹の昴』に続く感動の中国宮廷ロマン。

■感想
ジャンルで言えばミステリーなのだろう。珍妃がいったい誰に殺されたのか、それを探り当てるというのが大きな流れだ。ただ、前作の蒼穹の昴で、それほどインパクトのある人物ではなかった珍妃を、ここへきて主役にもってきたのはなぜだろうか。厳密に続編としないためにそうしたのかもしれない。しかし、本作は明らかに前作を読んでいないと楽しめない部分もある。何の予備知識もなしに本作を読むと、かなり苦しいかもしれない。

蒼穹の昴から引き続き西太后のイメージ先行型となっている。ただ、蒼穹の昴を読んでいればまだしも、一般の人がどれほどイメージできるかというとちょっと辛いかもしれない。どれだけバックグラウンドに知識があるのか、それが試されるような作品かもしれない。

この時代の中国に対して、日本や列強各国がどのような態度をとったのか。一般的な知識ではなかなか学ぶことができない裏の部分を感じることができるのは、前作から引き続きすばらしいと思う。ある意味、この時代の歴史を学ぶ上では一番よくわかる作品かもしれない。ただ、異常にマニアックな知識となるかもしれないが。

前作のイメージそのままに、期待して読むとかなり期待はずれな印象を受けるかもしれない。ただ、まったく別物の作品として読むには難しすぎる。本作が気軽に人に進められるような作品ではないのは確かだ。



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