手紙


2006.12.13 感動ポイントは必ずある 【手紙】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
おそらく原作を読んでいなければ確実に泣けたであろう。特に兄である剛志との最後の場面では涙なくして見れなかっただろう。それほど強烈に泣ける場面はあった。しかし原作を読んでおり、その後の流れや展開などがなんとなく予想できるために感動の波は押し寄せるのだが、そこからもう一段階超えて泣けるまでには至らなかった。犯罪者の家族もそれと同等の差別を受けるのは当たり前だという電気店の会長のセリフは本作のポイントでもある部分だろう。しかしその部分がやけにあっさりとした印象しかなかった。全体的には原作を読んだときとほぼ変らない印象をもつことができた。しかし細かい部分でいうと沢尻エリカの役がどうしてもイメージしていたものと大きくかけ離れていた。もう少し地味な女優の方がよかったのではないだろうか。

■ストーリー

弟の大学の学費のために盗みに入った邸宅で、誤って女性を殺してしまった剛志。千葉の刑務所に服役中の彼の唯一の支えが弟の直貴から来る手紙。しかし、兄が受刑者というだけで、差別され、仕事も転々とし、恋人にもふられ、夢さえ打ち砕かれてきた直貴。兄を思いながらも、その存在の大きさ、罪の大きさに彼は押しつぶされそうになる。そんな彼が所帯を持った。守らなければならない妻、子どものために、直貴はある決心をした。

■感想
東野作品ではおなじみの山田孝之主演。そしてすでに貫禄十分の沢尻エリカに最近評価が高まっている玉山鉄二。山田孝之や玉山鉄二はまさにはまり役だと思う。原作のイメージとほとんど一致していた。しかし沢尻だけは何か違和感があった。工場で働く直貴にかげながら恋する乙女という役なのだが、それはジミな女の子でなくては説得力がない。相手が沢尻ならば直貴がうっとおしがる理由もぼやけてしまう。そこだけが唯一の気になったポイントだ。

山田孝之の影のある演技は相変わらずうまい。そして玉山鉄二の弟思いな兄貴もとてもすばらしかったと思う。兄の弟を思う気持ちと、弟が兄を思う気持ち。原作ではもう少し兄に対する恨みや憎しみのようなものを持っている印象があったが、本作では兄に対してそれほど嫌悪感がないようだった。その部分が最後の刑務所慰問の場面で兄弟の溝が埋められたという気持ちに影響するのだろう。兄弟の関係よりも、あくまで犯罪者の身内とその他の人々という関係をメインにしぼっているようだった。

最後の場面では小田和正の曲が流れる。この場面でこの曲を流されると泣かない人はいないだろう。特に玉山鉄二の祈りながら男泣きする場面は舞台で必死に漫才をする直貴と対照的にぐずぐずに崩れている。しかし、これが見ているものの心の奥底に何かえたいの知れないものを送り込んでいる。おそらくこの場面だけでも十分に泣けるだろうが、音楽でさらにその効果が倍増している。

原作を読んでしまったがために感動は少なかったが、この手紙という作品を映画であれ小説であれ、
最初に触れた媒体では確実に心に響く何かがあるはずだ。



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