単騎 千里を走る


2006.3.5 巨大な中国を感じながら 【単騎 千里を走る】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
素のままの高倉健が素のままの親父を演じている。演技らしい演技をしているように見せないのも実力のうちか。親子関係が希薄な場合、大抵は親が死ぬ間際になって子供が後悔するというのが定番だ。本作はその逆パターンで息子が死に直面してはじめて、息子との関係を省みる。しかし高倉健は不器用な親父が良く似会う。イメージそのままの役なので当然違和感はない。昨今の半日感情もここだけは存在しないように暖かく迎える地元民達。ここだけ古き良き時代を感じさせる人間ドラマがある。

■ストーリー

息子が病床にいると聞いた高田(高倉健)だったが、息子との間には確執があり、長年会うこともなかった。しかし、余命いくばくもないと知り、彼は息子と中国の役者リー・ジャーミンとの約束を果たすために、単身中国へ。言葉も不自由な彼が、中国でいろんな人と交流を持ちながら、リー・ジャーミンを求めて旅をする。

■感想
親が子供のために何かするときに理由が必要なのだろうか。息子のために、息子が手がけていたことを引き継ぐ。そこに理由は必要ないはずなのになぜか理由を求めてしまう。今までの罪滅ぼしのつもりだろうか、それとも息子の考えを知りたいために息子の仕事を経験したかったのだろうか。

親子といえども全て理解できているとは限らない。親の心子知らずであり、子の心は親にとっては未知のものだ。自分が死の淵を彷徨っている時に、自分の父親が中国へ向かい、自分の仕事を引き継いでくれたとわかるとどんな気持ちになるのだろうか。恐らくうれしさ半分、困惑半分だろう。特にこの親子のように親子の溝が広がっている場合は特にそうだろう。

子を持つ親の気持ちになれば、また違った感想も生まれてくるのだろうが、たとえどんなに父親ががんばろうとも今更感はぬぐえない。親孝行したい時に親はなしではないが、もう少し早く息子と向かい合うことができればという思いは捨てきれなかった。

巨大な中国を感じながら、どこか心はむなしさを感じてしまった。



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