タカイ×タカイ 


2008.2.22 誰もが最初に考えるトリック 【タカイ×タカイ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
Xシリーズ第三弾。すっきりとしたわかりやすいミステリーと言えるだろう。キャラクターの魅力もそれなりに伝わっており、物語も寄り道することなく非常にシンプルに終わっている。ただ、肝心のトリックがいただけない。事件が発覚した瞬間イメージしたトリックがそのまま使われていた。おそらくこれは誰もが最初にイメージすることだろう。それをそのまま、ひっくり返すことなく、トリックとして使うのははっきり言って物足りない。事件の細部にわたる細かな話はおいといて、まずミステリーとしてトリックが一番大事だと思うのだが、力の入れようが足りないと感じた。タカイ×タカイというタイトルもなんだかとってつけたように感じてしまった。

■ストーリー

「あんな高いところに、どうやって死体を上げたのでしょう?」有名マジシャン・牧村亜佐美の自宅敷地内で発見された他殺死体は、奇妙なことに、地上約15メートルのポールの上に掲げられていた。被害者は、前夜ファンと牧村の会食中に消えたマネージャーだった。事件関係者の調査依頼を受けた《探偵》鷹知祐一郎は、複雑に絡み合う人間関係の糸を解きほぐし、犯人の意図と事件の意外な真相に迫る。

■感想
Xシリーズの登場人物たちのキャラクターがやっと明確になってきた。本作は事件というよりも、このキャラクターメインということで考えれば、十分面白いと思う。今までのシリーズのように強烈に頭の切れる男や、女装癖のある男など特別ではないが、平凡でありながらのらりくらりと事件の核心をつくあたり新しいのかもしれない。ただ、共通しているのは食べ物には極端に弱いということだろう。きょうび飯をおごるからといって大喜びでついてくる若者がどれだけいるのだろうか。

作者はマジシャンが好きなのだろうか、幻惑の死と使途でも登場したのだが、今回はマジシャンである理由はまあ、あるといえばあるし、なくてもトリックにはさほど問題がないように感じられた。タカイ×タカイというタイトルどおり、死体が高いポールの上につるされるという現象を読んだ瞬間、ある一つの可能性を思い浮かべた。それは誰もが考えることで、特別難しいことではない。それがそのまま最後のトリックとして登場したときには、なんだかがっかりした。もうちょっと捻りがあっても良いのではないかと思った。

今回シリーズ化されてはいるが、このシリーズを通して何か意味があるのだろうか。メインキャラクターの違いだけがシリーズということになるのだろうか。萌絵が登場したり、なにやら秘密がありそうな男だったりと、またいつもの真賀田四季がらみになるのだろうか。キャラクターの強烈なインパクトはなく、事件のミステリアス感もない。しかし、それなりに楽しんで読むことができる。キャラクターというよりもリズムが優れているのだろうか。ただ、結末はトリックのあっけなさから尻すぼみ感は否めない。

シリーズとして読み続けることに意義がある。



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