幻惑の死と使途 森博嗣


2005.10.23 マジックのトリックに惑わされる 【幻惑の死と使途】

                     
■ヒトコト感想
マジックのトリックと殺人事件のトリックを混同してしまい、マジックのトリックを間違った方向に
導くことで、殺人事件のトリックを分かりずらくしている。
次回作への伏線も含められており、それも気になるところだが、本作のマジック関係のトリックは
意外にそんなものかという印象をうけた。
しかし事件のトリックはまさに本作中でも述べているように非常にシンプルなものでそれに気が付いた時には
目の前の濃い霧がスットいっぺんに晴れたような気持ちだ
本作の事件の動機も今までの作品に比べると理解しやすいかもしれない。

■ストーリー
「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」
いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻が衆人環視のショーの最中に殺された。
しかも遺体は、霊柩車から消失。
これは匠幻最後の脱出か?幾重にも重なる謎に秘められた真実を犀川・西之園の理系師弟が解明する。

■感想
マジックのトリックと殺人事件のトリックという二重構造なのだが、マジックのトリックに関しては
およそ想像の範囲内のものであった。マジシャンの心意気というかどんなことがあってもタネをばらさない
という気持ちが事件の解決を妨げているのだが、そこに不自然さは感じない。
マジシャンにとってのマジックのタネは命よりも大事なものらしい。

事件は相変わらず犀川は何もせず、萌絵主導で進んでいくのだが、そこでも犀川は話しを聞き
ビデオを見るだけで事件の概要を掴み、トリックの目星をつけてしまう。
これはまさしく京極夏彦の作品に出てくる京極道と同じである。
にぎやかし役の萌絵と話しを聞いただけで全て分かってしまうのだが、決して結末までは
それを暴露することなく、もったいぶる犀川。
この二人の関係で物語がある程度成り立っているのだが、今回の犀川は相変わらずだが
萌絵がいつにもまして大活躍していた

巻を重ねる毎に何となく犀川の存在感(登場場面が)少なくなっているような気もしなくもないが
逆に事件にしゃしゃり出る犀川というのも読みたくはないので今のスタンスが良いのだろう。
その他に初期の頃との印象の違いは、犀川の萌絵に対する何気ない会話が随分冷たいような印象を受けた。
もしかして前からそうだったのかもしれないが、普通の会話でそんな受け答えをしたら
相手は激怒するだろうと思われるような会話をしていた。
そこは相手を不快にしない何か雰囲気でもあるのだろうか(笑)

次回作への伏線が所々にあったようだが、章立てをあえて奇数章のみにした意味はあるのだろうか??
時系列で判断してほしいという意味もあるのだろうが、真のねらいは次回作を読んでみないと分からない。



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