勝負の極意 


2008.3.8 男なら勝負すべし 【勝負の極意】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
小説家として大成するまで、様々な職業遍歴を経てきたのは、数々のエッセイですでに語られているので有名だろう。しかし、小説家になるまでの具体的な作家修行というのはほとんど語られていなかった。今回初めて、二束のわらじを履き続けたうえでの成功ということを知ることができた。並々ならぬ努力はしてきたのだろうとは想像していた、しかし、実際にエッセイとして語られると、かなりの衝撃である。毎日三時間の小説修行。それをひたすら二十年続けてきたと言われては、何もいえない。本作はそれと共に、競馬に関しての思いも語られているが、これはさほど目新しくもない。今までのエッセイとほとんど変わらないと言っていいだろう。

■ストーリー

私はこうして作家になった! どうしても小説家になりたかった男は卓越した博才と商才を駆使し、ついに悲願を成就――直木賞作家が履き続けた二足のわらじとは? 痛快人生必勝エッセイ。

■感想
作家になるまでの二束のわらじ生活は非常に興味深い。仕事をしながらも半ば習慣的に小説を書き続けるその忍耐力と根性。本人はまったく努力とは思っていないと書いてあるので、継続する力があるのも一種の才能なのだろう。小説を書く才能がなくとも(本作でも書かれている)、継続して努力しつづける才能があれば成功できるのだと思わされた。そして、それはサラリーマンをしながら、何か夢を持ち続けている人の励みになるだろう。今、現在二束のわらじを履き続けている人にはぜひとも読んでもらいたい作品だ。

後半からは、競馬の話に突入する。すでに作者の競馬話は読み飽きた感があるので、新鮮さはない。ただ、珍しく感じたのは、パドックでの馬の見方かもしれない。しかし、それであっても結局は競馬という博打に対するスタンスがメインなので、今までの作品となんら変わりはない。

勝負の極意というタイトルは、競馬に関してはそのままなのだろうが、前半の小説家になるまでの話にも通じるところがある。小説家になるという夢を小さいころから持ち続け、商売が軌道に乗り出してもひたすら小説家を目指す作者。普通ならば、商売で大もうけできたのならば、そちらに力を入れるのが普通だと思うが、そのあたりが作者の勝負した部分なのだろう。本作からは小説に対する情熱のようなものを感じることはないが、半ば意地になった執念のようなものはヒシヒシと感じてしまう。

小説家になるということは、とても険しい山を何十年もずっと登り続けることのように感じてしまった。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp