初等ヤクザの犯罪学教室 


2007.10.24 学校では教えてくれないこと 【初等ヤクザの犯罪学教室】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
浅田次郎のこの手の体験談的な話に失敗はない。特に犯罪絡みの話は、過去の実績からも間違いがないことはわかっていた。エッセイ風の本作。犯罪者にならないための知識を犯罪者側からのアプローチで、面白おかしくユーモアを交えて描いている。普通の人では到底経験できないことを経験してきた作者だからこそ、教えることができるノウハウがたっぷりとつまっている本作。すべてをバカ正直に真に受ける必要はないが、貴重な情報であることは確かだ。一般人には関係ないと思いがちだが、何か突然のアクシデントに対する心構えとして本作を読んでおくのもいいかもしれない。

■ストーリー

著者が体験し、見聞してきたさまざまの事件をもとに、鮮やかな詐欺の手口、簡単な人の殺し方、強盗、麻薬、誘拐などの凶悪犯罪のノウハウを講義する。これはあくまで、こうした犯罪に善良な市民が巻き込まれないようにと公開するものである。

■感想
すでに作者のこの手の作品はいくつか読んでいるので、それほど衝撃を受けることはない。しかし、相変わらず経験した者にしかわからないような貴重な話を、ユーモアを交えて語っている。どこまでが本当でどこからが嘘なのか、まったく判別不可能だ。普通に考えると、ある程度読者を楽しませるために虚構の部分があることは理解している。しかし、本作を読み進めていると、もしかしたら本当にすべて体験に基づいて描かれているのかも、という錯覚を覚えてしまう。

普通の人が経験できない
特殊な知識や体験談は、それだけで十分読むに値すると思う。それをエッセイのプロフェッショナルである作者が、面白おかしく描いているのだがら、つまらないはずがない。詐欺や強盗、誘拐の手口や、殺人現場を目の前で見た体験談など、こんなことまで書いていいのかと思えるほど、強烈な内容だ。しかし、作者の語り口がいかにもちょっとした日常を説明するような語り口なので、自然と読む方としても、大したことのないように感じてしまう。

犯罪に対してまったく自分には関係ないと思いながらも、いつ、どこで自分が被害者、または加害者になるかわからない。そう考えると、学校では教えてくれない知識を本作で学ぶことで、いざというときに慌てず騒がず、適切な対応ができるような気がする。もしかしたら、ただ、本作を読んで気持ちが大きくなっているだけで、実際の場面に出くわすととたんに何もできなくなるかもしれないが…。

作者のこの手の作品にはずれがないのは確実だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp