シェエラザード 上 


2007.11.18 謎の沈没船引き上げ 【シェエラザード 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
謎の中国人から依頼された資金集め。そして、一兆もの金塊を積んだ沈没船。一攫千金を目指すことは男のロマンであり、憧れでもある。しかし、本作はそんなロマン溢れる作品というよりも、曰くつきの船がどういった経緯で金塊を積み込み、沈んでいったのか。そして、船を引き上げようとする謎の中国人は何者なのか。本作ではこの沈没船引き上げがどれほど危険で、本気なのかということが語られている。日本を裏で操るドンまでも巻き込んで、本気で沈没船を引き上げようとする。過去と現在を同時進行させながら、謎が次々とあばかれていく。

■ストーリー

昭和二十年、嵐の台湾沖で、二千三百人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸。その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく―。いったいこの船の本当の正体は何なのか。それを追求するために喪われた恋人たちの、過去を辿る冒険が始まった。日本人の尊厳を問う感動巨編。

■感想
日本の尊厳に関わる感動巨編。確かに戦時中は日本全国どこか正常な感覚ではなく、それは弥勒丸に乗った船員たちも同じものなのだろう。戦時中という非常時であればこそ、許される部分もある。弥勒丸がどういった役割を持ち、裏ではどんな密命を受けていたのか。そこに関わる人々の、それぞれの人生を思うと、なんだか、これが戦争なんだとしみじみ感じてしまう。それと共に、平和というものがどれほど大切かを思い知らせてくれる。

弥勒丸が金塊を積み込み、沈没するまでのくだりが過去のパートであり、沈没船を引き上げるまでが現在のパートなのだろう。交互に語られる過去と未来。同時に登場する人物もおり、注意しなければ混乱する可能性もある。

上巻である本作では、まだ現在のパートで沈没船を引き上げるとはっきり明言はしていない。しかし、様々な登場人物たちが、沈没船に興味を持ち、関わっていく。抜き差しならない事態だということは、謎の中国人があっさりと関係者を殺害するあたりでも感じることができる。本作の流れとしては、沈没船引き上げまでの様々な障害をドラマチックに描いていくのではなく、過去の因縁が現在とどのような関係があるのか、そして、その時いったい何が起こったのか。そんなことが語られるのだろう。

戦時中の悲しさというものをジワジワと感じることができる本作。たまりに溜まったその気持ちを、下巻で一気に爆発させることになるのだろうか。

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