スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師


 2008.7.1  人肉パイ製造工場 【スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ミュージカルだ。ドリームガールズのときもそうだが、どうもこのミュージカル調というのに慣れることができない。明らかなホラーをミュージカルで少しやわらかに、しかしやるべきことや見せるべき部分はしっかりと抜け目なく組み込まれている。手にカミソリを持ち、客の喉を切り裂き、そのまま階下へと送り込む。この一種の流れ作業的な部分は、まるで人肉パイの製造工程の一部のように感じられた。多少グロテスクな場面が登場するのだが、突然始まる歌に緊張感が緩んでしまう。それにしても、人肉を食べ物に入れるといえば、毎回包みモノなのはなぜだろうか?確か他にも餃子やロールキャベツなんてのもあったような…。ミュージカル調というのを受け入れられるか、それが問題だ。

■ストーリー

舞台は19世紀の英国ロンドン。無実の罪で投獄され、その首謀者に妻も娘も奪われた男が、名前も姿も変え、ロンドンのフリート街へ戻ってくる。15年ぶりに再開した理髪店、そこで腕を振るうのは、殺人理髪師スウィーニー・トッド。胸には復讐、目には狂気、そして手にはカミソリを――。そんなトッドの共犯者となるのはトッドに思いを寄せる、売れないパイ屋の女主人。2階の床屋へ入ったお客は、好むと好まざるとにかかわらず、階下のパイ屋へ行く仕組み。やがて煙が立ち昇り、この世のものとは思えない美味しいパイが焼きあがる……!

■感想
理髪店の店主がとんでもない殺人者である。ミステリー的な部分や、警察に捕まるかどうかなど、そのあたりを気にしてはならない。顔を変え狂気を含んだその雰囲気からは、何者をも圧倒するオーラのようなモノが漂っている。正体を知られるとすぐに人肉パイの製造工程へ移行される。あっさりと切り裂くあたり、なんだかやけに心地よく感じてしまった。飛び散る血しぶきも、ミュージカル調の中であればちょっとしたオブジェのようにも感じられた。

物語が佳境に近づくにつれて、グロテスクな描写は増えてくる。それと共に、スウィニー・トッドのテンションも上がってくる。強烈な存在感をしめすトッドが、復讐にしか頭にない狂気の目をギラつかせる場面では、ミュージカルということを忘れさせる効果がある。人肉パイの気持ち悪さも相当なものだが、トッドの表情自体もかなり強烈なものがある。トッドに関わる人々は、全てが不幸になり、幸せな結末を迎えることはない。たった一人の少年を除いて。

ミュージカルという部分がなければ、もしかしたら平凡なホラー映画となっていたかもしれない。特徴としてはトッドをジョニー・デップが演じたということくらいだろうか。特別心に残るホラーというわけではないが、ミュージカルホラーという部分では珍しいのだろうか。ただ、なぜミュージカルなのだろうか。ホラーをあえてミュージカル調にする効果は、恐怖感を和らげる理由しかないように思えてしょうがなかった。

ジョニー・デップファンならば、見ても良いだろう。その他には、強烈なミュージカルファンか、人肉系が好きな人にはお勧めかもしれない。純粋なホラー映画ファンにとっては、もしかしたら物足りないという印象の方が強いかもしれない。



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