獅子の門 白虎編 


2007.12.22 究極な戦いの表現方法 【獅子の門 白虎編】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
とうとう主役候補の五人が勢ぞろいした。そして、そのままトーナメントで戦うことになる。五人の中でキャラ立ちしているのは、室戸武志や志村礼二なのだろう。作者のお気に入りもそのあたりなのだろうか。しかし、単純な強さで言えば竹智完が抜けているような気がした。しかし、物語は予想を裏切り、強さ以外のものが結果として現れている。本作はオープントーナメントがメインだが、前作まで強烈な個性を放っていた久我重明がなりを潜め、羽柴彦六も戦うことはない。それは、五人の熱い主役候補たちの戦いだけで、おなかいっぱいになってしまうからだろう。

■ストーリー

フルコンタクト空手の最高峰・武林館全日本オープントーナメント、開幕!!室戸武志、芥菊千代、加倉文平、志村礼二、竹智完の五人の獅子たちが、直接対決する瞬間が迫る!会場には、久我重明、羽柴彦六をはじめ、五人の闘いを見守る者が集まり始めていた。まるで、運命に導かれるように…!!

■感想
運命に導かれるようにトーナメントに参加する主役候補たち。トーナメントの組み合わせも、宿命のライバル同士が戦うように、うまい具合に組み合わさっている。この組み合わせを見た瞬間、まず最初に思ったのは、竹智完と志村礼二はいったいどちらが勝つのだろうかということだ。少なからず因縁のある二人が、どのように決着をつけるのか、単純な力であれば竹智完の方が一歩抜けていると思うが、意外な結果となった。物語の流れからいくと、こうなるべきなのかもしれない。

そして、やはりというか予想通りというか、作者の一番のお気に入りである室戸武志が大活躍だ。格闘技に対しては素人に毛が生えたようなものでありながら、その肉体だけで、過酷なトーナメントを勝ち上がっていく。常識的に考えれば、ありえない展開なのだろう。創作だからこそできることで、キャラクター的にも、今までにない強烈な個性を持っている。己の肉体のみ信じ、ひたすら戦い抜く男。ありきたりな格闘技の達人でないところがすばらしい。

宿命のライバルたちの戦いは、もはや文字では語りつくしてしまったのだろうか。後半になると、すでに詩というか、哲学的な描写さえ現れてくる。殴り、殴られの世界が極限に達したとき、人はどのようなことを考えるのだろうか。究極の状態になると、本作のように、言葉では語りつくせないような、
不思議体験をするのかもしれない。これ以上ないほど、激しい戦いの描写を本作でしてしまうと、まだ準決勝であるトーナメントが決勝の戦いでは息切れしてしまうのではないかと、心配になってくる。

このトーナメントの結果で、誰が本作の主役になるのか、決定するような気がする。

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