深夜特急4 


2007.5.17 今では考えられないルート 【深夜特急4】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
時代的な話もあるのだろうがシルクロードを馬鹿正直に渡れるのは今の時代では考えられないことだ。特にアフガニスタンでの生活。911以降アフガニスタンは危険な国というイメージが付きまとうが、この時代ではそんなことは一切なかったのだろう。衝撃的な長距離バスでの移動だとか、旅の中で出会う同じようなヒッピーたち。このころになると<私>の旅に対するスタンスも明らかに変わってきている。旅に対する好奇心が薄れるのと反比例するように、よりずるがしこくなっているような気さえした。

■ストーリー

パキスタンの長距離バスは、凄まじかった。道の真ん中を猛スピードで突っ走り、対向車と肝試しのチキン・レースを展開する。そんなクレイジー・エクスプレスで、〈私〉はシルクロードを一路西へと向かった。カブールではヒッピー宿の客引きをしたり、テヘランではなつかしい人との再会を果たしたり。前へ前へと進むことに、〈私〉は快感のようなものを覚えはじめていた―。

■感想
イラン、アフガニスタンなど今では危険な国という認識が多数を占めている国。時代的な違いはあるにせよ、ふらりと訪れた日本人の若者を快く向かい入れる風潮は昔はあったのだろう。今やアメリカの手先としか見られなくなった日本。本来ならこれら中東の国は日本に対して良いイメージを持っているはずだったのだ。

旅も中盤を過ぎたこの巻では、<私>の旅に対するスタンスの変化が見て取れる。初期の頃には騙されまいとするあまりからだ全体から発する警戒心のようなものを感じることができたが、本作ではそのバリアが取り払われる変わりに、心から金に対しての執着心というものが出てきているように感じた。それも普通の執着心ではなく、あざといまでの騙し合いも楽しめるほど
日常的になった値切り交渉など、旅慣れているとしてもその変化には驚かされた。

長距離バスでの旅が本作の中では一番印象に残っている。日本にいるとバスは定時にきっかりと目的地に到着するのが当たり前だと思っている。しかし中東ではバスは一つの財産であり、それを元手に一稼ぎしようとする人々の金儲けのツールとなっている。長時間バスに乗るというのでも辛いのに頻繁に道に迷ったり、空調が完備されていなかったりと想像を絶する辛さなのだろう。

今、中東に旅をしようと思ったらとてつもない危険が伴う。本作はみのがしがちだが、実はかなりのリスクを含んでいる。それを意識せずに今、本作を読んで突発的に中東へ旅に出ようと思う人がいたら、もう少し冷静に考えてもいいのではないだろうかと思う。

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