親切なクムジャさん


2006.2.5 笑顔ですごいことをする 【親切なクムジャさん】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
復讐者に憐れみをオールドボーイと続く復讐三部作の最後を飾る作品。前二作からは明らかにテイストが違っており、前半部分はコメディ色が強い。ニヤリとするブラックな笑いなのだが、その根底に隠れている復讐というものがあるので全体の雰囲気は決して明るくは無い。美しいクムジャさんが無表情にちゃくちゃくと計画を実行していく姿にはうすら寒いものを感じ、後半はパク・チャヌク監督お得意のグロテスクな描写が多数出てくる。目を背けたくなるようなシーンもあり、特にラストは悲惨すぎて見ていられないような映像だ。

■ストーリー

幼い子供を誘拐し殺害した容疑をかけられ、無実の罪で13年の刑期を終えた美しい女クムジャが、自分に罪を着せた男に対し、壮絶極まりない復讐計画を企てる。13年間の刑務所内での“親切”な行為によって、協力してくれる仲間を得た彼女は、綿密な計画を立て、復讐の準備をちゃくちゃくと進めて行く。離れ離れになった子供と再会するも復讐の気持ちは治まるものではない。今、13年間の恨みが晴らされて行く・・・。

■感想
ブラックユーモアたっぷりの前半とグロテスクな後半。このギャップにはすごいものがある。復讐劇なので全体を通した雰囲気は暗いのだが、暗い中にも刑務所でのクムジャさんの行動がユーモアたっぷりに描かれている。本作がただの復讐劇となりえなかったのは、この刑務所時代の親切な行動が鍵となっている。

刑務所内ではクムジャさんの半笑いのようなやさしい笑顔から想像できないような残酷なことを淡々とやり続けている。残酷なのだが、音楽とカメラワークでとてもコミカルな雰囲気に仕上げられている。後半と明らかに違うのは残酷描写を直接表現していないのが良いのだろう。物語が進むにつれて、より暗い方向に進んで行く。そんな中でも一服の清涼剤のようにクムジャさんと娘の関係にはホロリとさせられるものがある。

タイトルからは本作が復讐劇だとは想像できず、前半を見る限りはユーモアあふれる作品かと思うかもしれない。しかし結末間近では復讐劇三部作の最後にふさわしく、とてつもないことをやってのけている。はたしてここまでする必要があるのだろうか、前二作と比べても辛く、苦しい場面がつづく。前半とのギャップから耐性ができていないのか、かなり辛い場面だった。

復讐の原因が二作品と比べると弱いような気もするが、クムジャさんの特異性は見ものかもしれない。



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