復讐者に憐れみを


2006.2.1 無表情な登場人物達 【復讐者に憐れみを】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
パク・チャヌク監督の復讐三部作の一作目。全編通して静かな印象がある。主役であるリュがまったく話さないので物語に会話らしい会話が極端に少ない。印象的なのは復讐や拷問などで相手を痛めつける音や叫び声だ。復讐からは何も生まれないということをわかっていながら、復讐をやめることができない。演じている俳優達の顔のアップからはものすごい迫力を感じるのだが、恐怖感というよりも虚しさの方が強いかもしれない。見終わるとどっと疲れてしまう作品だ。

■ストーリー

聴覚障害者のリュは、病気の姉を救うため自分の腎臓を移植するつもりだったが、血液型が合わない。さらに、勤務先の工場を解雇され、わずかな退職金も、臓器の密売人に騙し取られてしまう。そんなリュに、恋人のヨンミは、工場の経営者ドンジンの娘を誘拐しようと持ちかける。金と引き換えに、娘は無事に帰すつもりだった。ところが、思いがけない事故で娘が溺死し、ドンジンは犯人への復讐を誓う。一方リュも、密売人に復讐を始める…。

■感想
見終わった印象はちょっと北野武映画に似ていると思った。登場人物達の無表情さ、殺人があっさりとおこなわれる部分は酷似している。しかし本作のグロテスクな部分は突出したものがある。そこまで、映像として魅せる必要があるのだろうか疑問だが、本作の特徴のひとつになっていることには違いない。残酷な描写が多数あり、受けつけない人もいるかもしれないが、復讐のすさまじさを表現するには一番判り易い方法なのかもしれない。

本作の画面からにじみ出てくる蒸し暑さというか、なんともいえない暑苦しさは何なのだろうか作品の舞台が夏というのもあるが、じっとりと汗ばむような粘着質な雰囲気。それは恐らく復讐者の執拗なまでの執念が無表情な中にも無意識に感じとれているからだろうか恐ろしいまでの執念の後に達成した復讐、その後はその蒸し暑さも薄れたような気がした。

目を背けたくなるような描写と人物の無表情な正面のアップ。これが印象的でなぜこの場面で無表情でいられるのか、なぜこんな酷いことを平気でできるのか、そんなことを考えるときりがないので考えるのをやめた。

北野作品もそうだが、見終わった後には変な疲れと、汗が乾いたなんともいえない不快な気持ちだけが残った。



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