新・餓狼伝 巻ノ一 


2007.11.23 必殺奥義は存在しない 【新・餓狼伝 巻ノ一】

                     

評価:3
■ヒトコト感想
前作から引き続き、とうとうスクネ流の秘密が明らかになり、新たな強者も登場する。まさかスクネ流の秘密がこの結末だとは思わなかった。確かに、あまりに現実離れしてしまうと、とたんに作品全体の品位にかかわってくるからだろう。不自然な必殺奥義を作ってしまうと、その後の流れにも影響しかねない。本作では、スクネ流と共に、またまた新たな夢の対決が実現されようとしている。あの強かった葵流をあっさりと破ることで、新たな強者を登場させる。この手法は、まさしく少年ジャンプ的だ。

■ストーリー

明治の柔聖・前田光世がブラジルで死んだのは、スクネ流の奥義によるものかもしれない…伝説の秘伝書を追って、武道家たちの腹のさぐり合いが続く。借金のため、カイザー武藤は東洋プロレスのリングに上がり、苛烈なファイトを見せる。文七は、そのカイザーと東洋プロレス主催の大会で激突することになった。大会開幕―いま、第三試合に登場した伊達潮男は、血みどろで、プロレスラーの魂ごと、激闘していた―。

■感想
スクネ流に隅田にカイザー武藤。カイザー武藤は名前に原型をとどめていないが、ジャイアント馬場なのだろう。プロレスがプロレスの技でバーリトゥードに勝つ。まさにプロレスファンの夢をそのまま実現したような形だ。そして、その伝説ともいえるカイザー武藤が丹波と戦い。圧倒的な強さを見せ付けるグレート巽が堤と戦うことになる。本作では、まだ、それは実現されておらず、次巻を待たねばならない。この強烈な引きの強さは相変わらずだ。

あの強烈な強さを誇っていた葵流があっさりと負ける。打撃を加えるように間接を決める男、隅田。また一人、新たなつわものが登場してきた。しかし、流れ的にいうと、なんとなくだが、マカコのかませ犬のような気がしてならない。ある意味、ポッと出てきて、強烈な強さをアピールするキャラクターは必要性がなければ、メインのキャラクターのかませ犬となる。これは本シリーズの定番と言ってもいいだろう。

スクネ流のタネ明かしをどのようにするのか、それも前巻からの楽しみの一つだったが、ある意味、予想外な答えだった。実際に技として存在するのであれば、グレート巽だろうが松尾象山だろうが、まったく関係ない。スクネ流を学んだものが一番強いことになる。そこは純粋な格闘技小説である本作にとって、漫画的だとはいえ、キッチリとしていたということか。
圧倒的な奥義を持つようなものは存在しない。あるとすれば松尾象山その人でしかないのだろう。

次巻を読めるまで、どれほど待てばいいのだろうか。日々移り変わる現実の格闘技界とリンクしようと必死なのだろうが、発刊ペースの関係で、どうしてもずれが生じてしまう。まあ、それはしょうがないことなのかもしれない。



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