四季 春 森博嗣


2006.1.10 天才の頭の中はこうなのか 【四季 春】

                     
■ヒトコト感想
S&Mシリーズ、Vシリーズ全てを読みこんでいることが前提の作品。一見さんお断りの雰囲気は強く、物語の構成上非常に理解しにくい展開になっている。これを森作品初心者が読むとまったくついていけないだろう。四季の異常ぶりが今までの作品よりもさらに際立っており、別格だというのはものすごく良くわかる。ミステリーというよりも、真賀田四季という人物の紹介作品といっても過言ではないだろう。しかし、四季の中の別人格や謎の其志雄という人物が現れたりと、読者を混乱させる要素はたっぷりとある。

■ストーリー

『すべてがFになる』の天才科学者、真賀田四季の少女時代。叔父、新藤清二の病院で密室殺人が起こる。唯一の目撃者は透明人間だった!?すべてを一瞬にして理解し、把握し、思考する才能に群がる多くの人々。それを遥かに超えて、四季は駆け抜けていく。其志雄(きしお)は孤独な天才を守ることができるのか!?

■感想
四季が常人とかけ離れた頭脳をもっており、幼少時代からずば抜けていたということがものすごく良くわかる。それと共に、四季の中に存在する別人格や兄弟、透明人間と思い込んでいる人物。今いったい誰の目線での話しなのか理解するのが非常に困難で、一回読んだだけでは全てを完全に理解するのは難しいだろう。其志雄という名前の登場人物も物語の中では複数登場するのでそれも混乱させる要因になっている。

Vシリーズの懐かしい人物が多数登場している。この時代関係を考えるとVシリーズ、四季、S&Mシリーズという流れなのだろうが、そうするとちょっと納得いかない部分もでてくる。それは捩れ屋敷の利鈍で西之園萌絵と保呂草が競演しているのだが、それ自体はありえるはずがないことだ。萌絵と保呂草の競演というイメージがあったので、四季とVシリーズの面々の関係を理解するのに非常に時間がかかってしまった。

本作ではミステリーはとってつけたようなものであり、まったく重要視されていない。四季という人物がいかに別格かをアピールする作品であり、四季を利用しようとする人物の中に、Vシリーズでお馴染みの各務や佐織を登場させたりと、全ての物語は四季につながっていると嫌でも思いしらされる。しかし、何もかもが四季とつながっているというのはちょっと強引過ぎると思うのだが、これが全て四季シリーズが終わったころには自然な流れになっているのだろうか。

シリーズを読まずに、本作を読むというのはありえないことで、面白さを理解する云々よりもまず意味がまったくわからないだろう。シリーズを重ねる毎に誰にでもお勧めできる作品ではなくなってきている。四季の心と同じように、非常に敷居の高い作品となっている。



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