Θは遊んでくれたよ 森博嗣


2006.6.2 これからの展開にかなり期待 【Θは遊んでくれたよ】

                     
■ヒトコト感想
すべては繋がっている。そう思わせる流れになってきた。森作品の初期からあちこちに顔をだしている真賀田四季がこのシリーズにも関わっているような記述があり、さらに保呂草まで登場する。前作が謎のままで終わり、本作も明確な答えが得られないまま終わったのもすべてはこの後に起こる事件への伏線なのだろう。根っからの森作品ファンならば、この中途半端な状態にも新たな展開へ思いをめぐらせ楽しむことができるかもしれない。

■ストーリー

飛び降り自殺とされた男性死体の額には「θ」と描かれていた。半月後には手のひらに同じマークのある女性の死体が。さらに、その後発見された複数の転落死体に印されていた「θ」。自殺?連続殺人?「θ」の意味するものは?N大病院に勤める旧友、反町愛から事件の情報を得た西之園萌絵らの推理は…。

■感想
前作同様。事件のトリックはよくわかった。しかしその事件を起こした理由付けがまったくない。動機が不明だと釈然としない気持ちは残る。しかし本作ではその釈然としない気持ちをすべて吹き飛ばすように新たな展開への布石がなされている。Vシリーズから登場した謎の宗教団体。おそらく裏で何かあやしいことをやっていそうな保呂草。そしてすべてに繋がるであろう真賀田四季。このあたりが出てくると、森作品ファンにはよだれ物かもしれない。

今までの森作品の”事件といえば密室”という流れから”連続殺人”風な流れになっている。事件の黒幕は誰なのか、単純な自殺であるはずがない。何かバックにはとてつもない大きな存在があるのではないかと想像力をフルに使って想像するのだが、結局それらは明らかになることはない。人によっては消化不良で納得いかないかもしれない。しかし、まだまだこの謎めいた雰囲気を楽しむことができるという思いの方が僕は強かった。

新シリーズでのキャラクター達は2作目だが相変わらずキャラ立ちしていないような気がする。どうしても前シリーズのメンバーの方が強烈な印象を残している。新たなシリーズといえども登場するキャラクターが代わり映えしなければ安心して読める半面、新鮮味はなくなってくるかもしれない。

事件の結末を曖昧なまま終わらせるにはそれなりの筆力が必要だろう。尻切れトンボにならないために本作がとった方法は、真賀田四季お得意の哲学的な禅問答を繰り返し、読者を煙に巻くという方法だ。最後はほとんど意味がわからずに終わってしまった。



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