スキャナー・ダークリー


2007.2.18 難解なロトスコープアニメ 【スキャナー・ダークリー】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
アニメと実写を融合したロトスコープアニメ。本作を観ると、すぐさまウェイキングライフを思い出した。ウェイキングライフが哲学的で観衆を煙に巻くような作品だったためあまりこの手の作品に良いイメージを持っていなかった。本作も映像的にはすばらしいし、この手法ではないと表現できない部分もある。それらをとてもうまく表現し、そしてスクランブルスーツはまさにイメージするとおりの未来のスーツだった。しかし悲しいかなウェイキングライフと同じように一筋縄ではいかない複雑なストーリーだった。油断しているとユーモアとシリアスが入り混じった複雑さに混乱するだろう。

■ストーリー

「物質D」と呼ばれる幻覚剤など、ドラッグが蔓延している今から7年後のアメリカ。覆面捜査官のボブ・アークターは「フレッド」というコードネームで、「物質D」の供給源を探るおとり捜査を行なっていた。普段は「スクランブル・スーツ」に身を包んでいるため、同僚すら彼の正体は知らない。ボブは捜査と監視のためにジャンキーのバリス、ラックマンと共同生活を営み、さらには売人のドナと恋人関係にまでなっていたのだが……。

■感想
豪華な俳優を使いながらのロトスコープアニメ。こうすることの効果は何が見込まれるのだろうか。不思議な雰囲気と実写では表現できないことを映像化できるがなんとなく現実味がなく感情移入が難しくなると感じた。最初に観たこの手の作品が難解だったために、そのイメージが離れることはなかった。本作もウェイキングライフには負けるにしても十分理解するのに困難が伴う作品だと思った。

一人二役をこなす覆面捜査官。そしてジャンキーたちとの共同生活。シリアス調かと思いきや突然お笑い系に突入する。この二つが同居するのがかなり違和感があり、同じ画面上に映ってはいるが、そこだけ見えない境界線が引かれているような感覚にさえなった。ジャンキー同士の会話は受け狙いなのだろうが、シリアスな雰囲気の中では浮いてしまい、シリアスな場面ではその前のお笑い系の会話が邪魔をして深刻になりきれていない。両方がお互いを打ち消している感じか。

不思議なスクランブルスーツの表現の仕方はすばらしい。このアニメならではの表現方法だろう。性別人種をまったく特定できない不思議なスーツ。これがなければ本作の存在意義はないと言っても過言ではないほどインパクトがある。
スーツのインパクトとストーリーの難解さ、そしてロトスコープアニメ。まったく予備知識なしに観ると面食らうことはうけあいで、確実に言えることは本作を楽しむにはかなり映画に見慣れていないと辛いだろう。

普通の映画ファンには敷居の高い作品かもしれない。



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