ルパンの消息 横山秀夫


2007.7.9 これが幻の処女作か… 【ルパンの消息】

                     
■ヒトコト感想
時効間近のせめぎあいとしては作者の第三の時効というのがある。作者があとがきで書いているように、ミステリーとして世に出損ねた作品という位置づけなので、当然まだ横山秀夫としての色が固まる前の作品だということだ。今までの横山作品とは明らかに雰囲気が異なり、新鮮さはあるが、物足りない印象はぬぐえない。十五年前のことを供述によって推理する。それが時効24時間前というから、確かにスリルはあるのだが、相当無茶だという思いもある。三人組のつっぱり高校生というあたりもなんだか横山作品らしくないように感じた。

■ストーリー

警視庁にもたらされた一本のタレ込み情報。15年前に自殺として処理された女性教師の墜落死は、実は殺人事件だった―しかも犯人は、教え子の男子高校生3人だという。時効まで24時間。事件解明に総力を挙げる捜査陣は、女性教師の死と絡み合う15年前の「ルパン作戦」に遡っていく。「ルパン作戦」―3人のツッパリ高校生が決行した破天荒な期末テスト奪取計画には、時を超えた驚愕の結末が待っていた…。

■感想
トリックもそうだが、そこに至るまでの緊迫感をあまり感じない。時効が迫っているはずなのに、その切羽詰った感じや、危機感というのを感じない。いろいろな事件や謎を絡めながら、事件を複雑に見せようとしているのだが、いくらなんでも三億円事件に絡めるのはちょっとやりすぎではないかと感じた。トリック的にも無理やり感は否めず、読み終わったあとのすっきりとした感じは少なかった。

テスト奪取計画である「ルパン作戦」と女子教師の死を絡め、なぜ15年前の事件を今更蒸し返すのかという疑問を最後まで引っ張っている。無駄な登場人物が一切なく、すべてが伏線として最後に繋がっているのはすばらしいのだが、無理やり繋げているパターンもあるので、最後はギクシャクした部分もある。

時効ぎりぎりのせめぎあいという意味では、すでに第三の時効ですばらしいものを読んでいるので、どうしても本作が弱く感じてしまう。時効の期限に関しても二転三転するわけではなく、すでに周知の事実を後から付け加える形になっている。誰もがあっと驚くのは第三の時効なのは間違いない。

今までとは一風変わった作品という意味では新鮮かもしれないが、いつもの横山作品をイメージして読むと、その違いにがっかりするかもしれない。




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