クワイエットルームへようこそ


 2008.8.1  コメディだからこそ救われる 【クワイエットルームへようこそ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
閉鎖病棟に入院するちょっと変わった人々を面白おかしく描きながら、理不尽な規則に縛られ、四苦八苦するさまも見せている。同じく閉鎖病棟を描いたような作品にはベロニカは死ぬことにしたというのがある。これはシリアス路線だが、本作は明らかにコメディ路線を突っ走っている。それでいて、どこか考えさせられる場面さえもある。客観的に見ると十分壊れているように見える明日香。周りを取り囲む人々の方がなぜこんな場所に?という人物が多い。閉鎖病棟のイメージとしては暗くじめじめとした雰囲気を想像していたが、本作は底抜けにカラリと明るい。ちょっと変わった人たちのバラエティに富んだ個性を楽しみながら、自分とは関係のない世界の話だから楽しめるのだと心の隅で考えたりもした。

■ストーリー

バツイチのフリーライター佐倉明日香は、目覚めたら真っ白な部屋で手足を拘束されて寝ていた。彼女は閉鎖病棟の中でもやっかいな患者が入れられる“クワイエットルーム”にいたのだ。この病院には、自分の髪を燃やしたり、拒食症で吐いたり、何度も閉鎖病棟から出ようとしてはがい締めにされたりといろんなタイプの病んだ人がいた。でも私はフツーなのに…。やってきた恋人に聞くと、どうやらオーバードーズで倒れて運ばれたらしい。睡眠薬の量が多すぎたのだ。明日香はずっと不眠症で、それは離婚したときから始まっていた。いったい何があったのか? 彼女は閉鎖病棟から出ることができるのか?

■感想
全体的にはコメディの要素満点で、そこかしこにちりばめられている、ちょっとしたコネタにニヤリとしてしまう。作品の性質上、あえて異常な雰囲気を表現し、そこから想像できる以上の際立った出来事が起こると、あっけにとられて笑えてしまう。綺麗で清潔な閉鎖病棟だけに、悲惨さを感じることはないが、真っ当な世界ではない。そこから抜け出そうとする明日香にどれだけ感情移入できるか、それが本作を楽しめるかのポイントとなるだろう。まぁ、なかなか普通の人では難しいのかもしれない。なんせ、明日香の普段の生活は常識を超えているからだ。

出演陣はとても豪華だ。ちょい役でさえも、それなりのビッグネームが並んでいる。一番目を引かれたのは蒼井優だ。おそらくこの作品のためにダイエットをしたのだろう。実際の閉鎖病棟の拒食症患者をまさにそのまま演じきっている。木の枝のようにほっそりとした手足。そこだけ見ると、女優魂のすさまじさを感じずにはいられない。その他にも、メインの役どころではないにもかかわらず妻夫木がでていたり、りょうが思いっきり怖い看護婦の役をやっていたり。配役の面白さには目を見張るものがある。

クワイエットルームから抜け出すことができるのか。本作のポイントの一つとして、自分が正常なのに、なかなかこの環境から抜け出せない明日香が苦悩するというのがある。実際の病院がこうだとは思わないが、なんでも杓子定規に考え、規則に縛られるお役所仕事的な雰囲気はどこにでもある。それを強烈に揶揄しながら、笑いに昇華している。最後には病棟から退院する人に対して寄せ書きをするのだが、それは建物を出た瞬間に捨てられることとなる。そのシーンを見た瞬間、全ては夢としておさめるべきことなのだと、勝手に理解してしまった。そこは、夢と現実の狭間の世界なのだろう。

シリアスな物語よりも、コメディが入っていた方がこの手の作品は抵抗なく見ることができる。



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