ベロニカは死ぬことにした


2008.2.11 死ぬ理由と生きる理由 【ベロニカは死ぬことにした】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作を日本人向けに変更した作品。なんだろう、確かに言いたいことはわかるが、特別な感想もなく、ただ、先の展開を予想しながら、そのまま予想通りの流れを見ていたというだけだろうか。自殺に失敗した女が次第に生きる希望をみいだしていく様を見ながら感動するべきなのだろうが、どうしても物語りに入り込めなかった。自殺しようとする理由も曖昧であれば、生に目覚める理由もはっきりしない。目を引くところは、サナトリウムの住人たちの奇抜さだけだろう。誰もが納得できるような理由付けがされないと、ご都合主義的にしか感じない。物語自体に説得力がなくなっている。出演している俳優たちの演技はすばらしいものがあるが、ストーリーには納得できなかった。

■ストーリー

生に嫌気が差して自殺を図ったトワ(真木よう子)は、奇妙なサナトリウムで目覚め、そこの院長(市村正規)からあと7日間の命と宣告される。院内で周囲と拒絶するトワは、しかしそこで画家志望で言葉を失った青年クロード(イ・ワン)と知り合う…。

■感想
命を捨てようとする人と、心が病んだ人々。同じ屋根の下で生活しながら、どのような交流があり、そして心境の変化があるのか。自殺志願から自分の余命が告げられると、そこで劇的に心境の変化がありとたんに生に執着するかというとそうではない。サナトリウムで生活する人々との交流や心温まるエピソード、そして、衝撃的な出来事があるわけではない。ただ、変だという感覚はあるのだが、それを具体的に言葉で表すのは難しい。一人浮いた形のトワなのだが、その浮き具合もなんだか中途半端な気がした。

言葉を失った青年クロードとの心の交流がトワを生へと導いていたという流れなのだろうが、それに対しても必然性や説得力を感じることができなかった。すべてにおいてどこかふわふわした感じが漂うのは自殺理由が曖昧だからだろうか。平穏な日常に疲れた、それ以外にも様々なトラウマがあるにしても、そこから脱却するほどの強い生への思いを感じることができなかった。

サナトリウムの個性的な住人たち。患者だけでなく、医者や看護婦でさせどこか壊れているように見えてしまう。アメリカの教会を思わせる病院の中で、ハイテンションな医者と看護士に囲まれて生活する患者たち。本来なら閉塞感に溢れているはずが、随分と自由で快適な生活を送っているように見え、それがサナトリウムというのを忘れさせる効果がある。トワと住人の生活風景を見るだけではトワが生に目覚めるとは思えなかった。

死ぬことにしたという能動的なタイトルからは想像できないほど、他人に依存しきった作品のようにも感じられた。



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