オヤジの細道 重松清


2008.4.6 ありのままのオヤジでよい 【オヤジの細道】

                     
■ヒトコト感想
連載コラムを纏めた一冊。比較的新しい作品なので、時事ネタもそれほど古臭くは感じない。オヤジがオヤジのために書くエッセイ。世代は違うが、いずれオヤジになる自分が読むとどう感じるのだろうか。思っていたほど違和感なく、同じような感覚で読むことができた。ということは、自分はすでにオヤジの域に達しているということだろうか。オヤジと言えば頑固で融通の利かない偏屈なイメージしかない。もちろんそんな描写もあるのだが、意外に、ものわかりの良い部分も見受けられた。自分の娘が短いスカートを履くことに対して、流行だからしょうがない、ガングロにならないだけマシだと考える部分には、少し驚かされた。

■ストーリー

ある日、ふと気がつくと中年になっていたシゲマツが、その未体験ゾーンの驚きを語りつつ、同世代にエールを送った「夕刊フジ」の大好評エッセイ。オヤジの歓びと哀しみ、ココロの秘密や如何に?巻末に「元祖負け犬」酒井順子氏へのインタビューを特別収録。

■感想
長い人生を考えると、今の年齢からオヤジになるまでの間なんてのはホンの些細な時間だ。そう考えるとすでにオヤジ、もしくはオヤジ予備軍といってもいいのだろう。オヤジは日々の出来事に対してどんなことを考え、そして何を思うのか。肉体的な問題や、家庭の問題。懐かしき青春の思い出を語り合ったり、時には若者に説教をしたり。オヤジに対して、それほど無理解なわけではない。共感のもてる場面もあれば理解できない部分もある。自分がオヤジ化の一歩を踏み出すまで、あとホンのわずか。オヤジとの違いを認識できるギリギリの作品だ。

気づけば中年、という言葉は恐ろしい。今の自分は年の割には若い部類に入ると勝手に思っているのだが、いつそれが崩壊し、中年と呼ばれるようになるのか、そればかりを気にしている。もしかしたら十代からすると今の自分の年齢はすでにオヤジに含まれるのかもしれない。若いころはあれほど嫌悪感をいだいていたオヤジ。それが身近に迫ってくると、否が応でも意識してしまう。頑固であったり、偏屈なオヤジには絶対にならず、若者に理解のあるオヤジを目指そうなんてことを考えていた。本作を読むと、オヤジはありのままのオヤジでいいんだ、とオヤジに対して優しい気持ちになることができる。

作者は職業以外は典型的なオヤジだと思う。そんなオヤジも流行に対しては意外に寛容で、誰もが通る道だからしょうがないというスタンスをとっている。これはできそうで、なかなかできない。頭では理解していても、どうしても口うるさくいってしまうのだろう。今の歳でも、すでに若者のファッションには理解できない部分がある。いったい真のオヤジになったときにどうなってしまうのか。確実に作者よりも口うるさく、頑固な親父になっていることだろう。

オヤジ世代にウケることは当然だが、その直前の世代にも間違いなくウケる作品だろう。




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