2007.4.28 微妙なドタバタコメディ 【王妃の館 上】
評価:3
■ヒトコト感想
王妃の館をめぐるドタバタコメディ。方や超豪華なツアー、方や宿泊場所を考えると破格なツアー。この二組のツアーを軸にドタバタコメディが繰り広げられるのだが…。肝心なコメディ部分が微妙な気がした。はっきりと笑えるでもなく、ニヤリとできるわけでもない。ちょっとしたニアミスや個性的なキャラクターのドタバタっぷりを笑うのが正しいのか。正直あまり笑えなかった。設定にあまりリアリティを感じることができなかったのと、ツアーの参加メンバーの顔を頭に思い浮かべることができなかった。もしかしたら下巻からはその真髄が明らかになるのかもしれないので、下巻に期待しよう。
■ストーリー
パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。
■感想
無粋なことだが、おそらく作者は取材旅行として実際にパリに行ったのだろう。もしかしたらそれ目的ではないかと思えるほど、明確な目的というか主題のようなものを感じることができなかった。それなりに面白いはずのコメディもフランスのパリで王妃の館を舞台にされると、イメージを働かせることができない。これがもしかしてちょっとした日本のホテルであったらどだろうか。非日常性は薄れるが、笑えるか。いや、どちらもそれほど笑えないか。
個性豊かな登場人物たちが、それぞれに伏線を張るように様々な経歴を持ち合わせている。それらの効果はまだこの上巻では現れない。それが複雑に絡みあい、最後にはすっきりと終わることができれば、コメディ以外の部分で面白くなりそうだ。今はまだ、序章にすぎず、これから大きく動き出そうとするときにルイ十四世の話がでてくるとそこでテンションが少し下がってしまった。
一つの客室を昼と夜のダブルブッキング。ニアミスあり、すれ違いありで面白くなりそうな要素は多分に持ち合わせている。これらがいかに効果的に活かされるか。下巻の流れによって、それは大きく変わるだろう。すくなくとも上巻の時点ではダブルブッキングの面白さというものを見出すことができなかった。そしてやはり浅田次郎といえば、お涙頂戴の感動物を期待していたというのも少しはある。
上巻は状況説明として下巻に期待。
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