奥様はネットワーカ 


2006.3.7 独特な挿絵つき 【奥様はネットワーカ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
大学内での様々な登場人物達の視点で描かれている作品。それぞれ登場人物のイメージがわきやすいようにその人物の一人称時に、個性的な挿絵が描かれている。これが雰囲気作りに役立っており、中身は特にここが際立っているということはないのだが、全体を通して不思議な雰囲気になっている。読み終わってみれば、結局犯人は誰だったのかなんてことはどうでも良くなり、不思議な挿絵と共に、独特な文体に翻弄された作品だという印象しかない。

■ストーリー

某国立大学工学部で多発する暴行傷害事件。化学工学科秘書のスージィこと内野智佳(うちのちか)の周辺でも不審な出来事が連続し、友人のルナも被害者となってしまう。事件は連続殺人に発展。物語はそれぞれに秘密を抱えた学部内の6人の人物の視点で謎を追う・・・。

■感想
タイトルが「奥様はネットワーカ」ということから想像すると、内容はかけ離れているかもしれない。つい想像しがちなパターンは、奥様が探偵もどきなことをし、犯人を推理するというような流れだ。本作はそうならず、森作品お得意の大学が舞台となった不思議なミステリーとなっている。

すべてが一人称で描かれているので、どうしても犯人の視点を描く時に読者にばれないよう無理をしている感がある。挿絵なども苦し紛れにXとしたり・・・。まあ本作に限って言えば挿絵があるおかげでずいぶん助かっていると思うのでこれをはずすことはできなかったのだろう。

大学内の教授の生活など一般人にとっては未知の世界を題材にしているが、森作品のファンにはすでにおなじみなのだろう。作者の感情が色濃く反映されているようにも感じてしまう。無駄な会議が多いとか、会議に出席する必要がない助手は最高だとか。すでに作者が現役の助教授だということは周知の事実なのに、これほどあからさまな態度でよいのだろうか。

多数の登場人物達のキャラクター付けを挿絵を使うことでより明確にしている。文章では伝わらない部分をうまく補っている。挿絵付きの不思議なミステリーだ。



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