2005.10.28 ミステリー好きな材料多数 【夏のレプリカ】
■ヒトコト感想
萌絵と犀川が別の事件に取りかかっている時に起きた事件のせいで、二人はそれほど活躍はしない。
代わりに被害者であり、萌絵の友人でもある杜萌が事件を解決しようとするのだが、
この構成はいかがなものか?
ある意味だれが事件を解決しようとしているのか不明なところがあり、イマイチスッキリしないのだが
最後はキッチリと萌絵と犀川が締めてくれるので安心だ。
半監禁状態な盲目の詩人、仮面、2カ所での誘拐事件など本作に出てくるものはまさに
ミステリー好きにとっては涎をダラダラ流しそうなものばかりだ。
■ストーリー
T大学大学院生の簑沢杜萌(みのさわともえ)は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。
杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、
実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。
眩い光、朦朧(もうろう)とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?
『幻惑と死と使途』と同時期に起こった事件を描く。
■感想
前半は簑沢杜萌主導で物語が進んでいく、さすがに同時進行となるとつらいものがあるのか
事件的にはそれほど大きなものでもなく、萌絵と犀川もほとんど登場することがない。
しかし、警察はそうもいかず両方の事件に対応するために行ったり来たりする様をかいま見ることができ
ここで同時進行しているということが意識できる。
盲目の詩人、素生。まず普通に読むことができない名前だ(笑)それでいて美少年であり
萌絵との接触もありで、ここまでくるとものすごく重要人物に思えて仕方がない。
しかし物語はそれを逆手にとって、ほとんど素生がらみのことがでてくることはない。
もっと素生を事件に絡めてもよかったんではないだろうか。
前から思っていたのだが、本作でも例外なく頭脳明晰な人物が登場する。
それは杜萌なのだが、萌絵と頭の中でチェスをしたりと、森作品にはただ者ではない人物がでてこないと
萌絵と犀川と対等に話しをすることができないのか、物語の面白さにも影響するのだろう。
たっぷりと提供された
ミステリーの材料を旨く料理することができなかったのか
本作はそれほど本格的なミステリーという感じではない。事件の本質は単純なことなのだろうが
犯人の精神世界の話しになってしまい、一歩間違えるとありきたりな二重人格物にならなくもない。
結末では多くを語らず、その後どうなったかということは想像するしかない。
そのへんもちょっと消化不良に感じさせる原因かもしれない。
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