ミュンヘン


2006.2.23 終わりのない暗殺のループ 【ミュンヘン】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
テロと暗殺の繰り返し、この終わりのないループからは抜け出すことができない。そんなメッセージが込められている作品のため見方によってはイスラエルのやり方を非難しているとも取れる。テロと暗殺の繰り返しゆえに目を背けたくなるような場面もいくつかある。しかしその事実をありのままに見せることによって、テロの激しさと暗殺の虚しさを表現しているようだ。アヴナーが暗殺に対して変に正義感ぶっているのが気になった。どこまでなら許されるというのは無いはずなのに自分がやってきたことを正当化したいという気持ちの表れなのだろう。非常にショッキングな映像が多いのだが、優れた演出によって終始目が離せない作品となっている。

■ストーリー

1972年9月5日、ミュンヘン・オリンピック開催中、パレスチナゲリラ「ブラック・セプテンバー(黒い九月)」がイスラエルの選手村を襲撃し、イスラエル人の選手・コーチ11人を射殺するという事件が起こった。イスラエルにとって最悪の結果になってしまった「ミュンヘン事件」。実行犯のうち、生き残って逮捕された3人も釈放される。イスラエル機密情報情報機関「モサド」はこの事件への報復として、アヴナー(エリック・バナ)をリーダーとしたチームを編成し、犯人と事件の首謀者11人の暗殺を企てる・・・、

■感想
原作がミュンヘン事件のリーダーであるサラメの一生を描いていることに比べると、映画は暗殺という明確な目的を作品化しているのでかなり分かりやすくなっている。映画ではサラメというキャラクターがほとんど描かれていないのだが僕自身は映画を見る前に原作を読んでいたので、時代背景やどのようにしてミュンヘン事件が起きたかということが分かっていた。これを知っているのと、いないのでは映画に対する印象も大きく変わるだろう。

余計な犠牲者を出さずに暗殺を遂行せよ。実際にそれは非常に難しいことなのだろうがそれを作品としてうまく演出に使っている。アブナー率いる暗殺チームが血も涙もない人間ではなく、任務遂行のためにやっているということをアピールするのによいエピソードもいくつかあった。

主演のエリック・バナが平凡な警護係りから暗殺チームのリーダになるにあたって、なぜそれを引き受けたのか、また父親とどんな関係があったのかが説明不足だった。この辺は原作を読んでいれば問題はないのだが・・・。そのアブナーがいったいどんな気持ちで暗殺を実行していたのか、僕はエリック・バナの演技からは感じ取ることができなかった。

前半までの暗殺チームを善、パレスチナの指導者達を悪という図式にしておきながら後半では、暗殺の虚しさとテロに対する暴力的な報復の虚しさからイスラエルを悪に仕立てている。

今現在続いているイスラエルとパレスチナの争いを世界中の人に、注目させるのには良い作品かもしれない。



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