マイ・ロスト・シティー 


 2008.7.22  高いハードル 【マイ・ロスト・シティー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
村上春樹の翻訳作品の中ではかなり高評価の本作。正直言うと高評価の理由がよくわからなかった。まずフィッツジェラルド自体の面白さというのを良く理解していないのが、そもそもの間違いなのかもしれないが、文章の揺れや独特の雰囲気を面白いと感じる以前に、読みにくさや、理解しにくさを感じてしまう。その結果、本作を読んでも同じような感想しかもつことがない。文章を読んでいて、普通ではないというのは十分感じることができるが、それが良い意味で普通ではないというわけにはいかない。明確なオチを求めたり、しっかりとした理由付けを求める現実主義者にはまったく向かない作品なのだろう。自分にはものすごくハードルが高かった。

■ストーリー

寂しさと、傲慢さと、抗いがたい自己破壊への欲望。一九二〇年代の寵児の魅力を余すところなく伝え、翻訳者・村上春樹の出発点ともなった作品集をライブラリーのために改訳。『哀しみの孔雀』のもうひとつのエンディング、「ニューヨーク・ポスト」紙のインタヴューを新収録。

■感想
フィッツジェラルドの翻訳作品としてはいくつか読んでいるし、その生い立ちやバックグラウンドも作品を通して知ることはできた。作品独特の面白さも訳者が説明しているように、即効性がないというのもなんとなくだがわかっている。しかし、じっくり読めば読むほど意味がわからないという感覚を拭いさることはできない。短編集なので、それぞれの作品に合う合わないがあるのも理解している。好意的に読めばそれなりに楽しめる作品もある。ただ、本作が最高の翻訳作品だとはどうしても思うことができなかった。

独特な文章の揺らぎを、翻訳しても残しているのが素晴らしいのだろうか。原書を読めば、翻訳の素晴らしさを理解できるのだろうか。昔流行ったシドニーシェルダンの超訳というのがあったが、どちらかといえばあっちの方が好きなのかもしれない。原書に忠実に、それでいて雰囲気を壊さないように英語で読んだ場合と同じような感覚にさせてくれるのは、もしかしたら本作の方なのかもしれないが…。ある意味古典的作品を読んでいるので、こんな感想を持つのも仕方がないのかもしれない。それにしても高いハードルだ。

おそらくフィッツジェラルドの作品として一番有名な作品をまだ読んでいないので、それは確実に読むと思う。その時、いったいどんな感想をもつのだろうか。グレート・ギャッツビーという作品を同じ訳者が訳したものとして読む。不安もあるが楽しみもある。本作の評価が高いということは、もしかしたら、それに近い雰囲気になるのかもしれない。そうなったとき、果たしてすんなりと受け入れることができるのだろうか。それが問題だ。



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