ミスト


2008.6.4 強烈な後味を残す 【ミスト】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
謎の霧による恐怖が襲い掛かる。霧といって思い出すのはザ・フォッグだった。これはまぁ、よくあるパターンの作品で、本作も似たようなものかと思っていたら、大違いだった。結局は謎の怪物たちに襲われながら逃げ切るという流れなのだが、妙に感情移入してしまった。逃げ込んだスーパーマーケットの中での混乱。そして、極限の恐怖から感覚が麻痺し、新興宗教的な教祖が登場する。すべてがリアルであり、終始目が離せない。お決まりどおり、主人公チームは無事逃げ切るというのではない。もし現実に同じようなことが起これば、きっとこうなるのかもしれないというような結末。怪物ものでありながら、すべてがリアルな素晴らしい作品だ。

■ストーリー

激しい嵐が街を襲った翌日、湖の向こう岸に不穏な霧が発生していた。デイヴィッドは不安に駆られながら、息子のビリーを連れ、隣人の弁護士ノートンと街へ買い出しに向かう。3人がスーパーマーケットに入ろうとすると、店内は大混乱。外では軍人が歩き回り、サイレンが鳴り続ける。すると、ひとりの中年男が叫びながら駈け込んで来た。「霧の中に何かがいる!」と。店外を見ると深い霧が駐車場を覆っていた!

■感想
この手の怪物系の作品は、まぁ楽しく見ることはできるが、ありきたりな展開と先が予想できる流れから途中で集中力が途切れてしまうのが普通だった。それが本作ではまったくなかった。最初はそうでもなかったが、スーパーマーケット内での派閥ができ始めたあたりから、何かが違うという雰囲気を感じた。主人公たちが、斬新なアイデアやチームワーク、そして信じられないような強運で生き残るというのではなく、あっさりと死ぬ可能性があるという現実。主要キャラクターがあっさりと死ぬあたりもなんだか、現実感を際立たせている。

怪物たちに襲われながら逃げ惑う人々。そして、神のお告げを代弁するがごとく人々の前に登場する謎の女。極限状態では、人はどうなるのか、人間の心の闇を描いている作品でもある。ある程度予想はできるのだが、実際に映像として見せられると強烈なインパクトを心に残す。怪物たちの原因を作った軍人に対する市民の行動は、まさに狂気の中に人間の本質を見たような気がした。そして、その場面をただ傍観するしかない主人公たちの思いも強烈に感じ取ることができた。

ありきたりな作品であれば、スーパーマーケットから脱出した主人公チームたちは、最後には希望に満ち溢れた何かが待っているはずだ。しかし、本作ではそうはいかない。たとえ車に乗って脱出したとしても、霧は永遠に続き、怪物たちが消えることはない。圧倒的な力の前に、なすすべのない人間の無力さを主人公たちの表情から感じ取ることができる。なんだか、このあたりがものすごく突出した現実感をだしているような気がした。

タイトルと作品の雰囲気だけで甘くみてはならない。終始目が離せず、非常にリアルで、強烈な後味を残す作品だ。



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