壬生義士伝 下 


2007.4.22 吉村貫一郎の死に様 【壬生義士伝 下】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
上巻から引き続き吉村貫一朗の侍っぷりが描かれている。新撰組との絡みが引き続き描かれてはいるが、特に斉藤一のあたりがピークなのかもしれない。それ以降は吉村の死に様や周りの人から見た吉村の人となりを伝聞していくという流れだ。やはり目が離せなくなるのは侍としての戦いのシーンや剣客といわれた人々との交流だろう。吉村の行く末を分かった上で読むので緊迫感は半減するが、どのような経緯と、どういった心で最後の切腹まで行き着くのか。その心を感じ取りながら、周りの人々の思い出話に感動する作りなのだろう。

■ストーリー

五稜郭に霧がたちこめる晩、若侍は参陣した。あってはならない“まさか”が起こった―義士・吉村の一生と、命に替えても守りたかった子供たちの物語が、関係者の“語り”で紡ぎだされる。吉村の真摯な一生に関わった人々の人生が見事に結実する壮大なクライマックス

■感想
上巻から下巻に行き着くにつれ、だんだんと流れは把握することができた。今後何か大きな出来事がこの下巻に待っているものと期待していたが、特に何もなかった。吉村貫一朗の親友や子どもたちを含めたその後の後日談などが語られ、どれほどすばらしくまた、人に愛されていたかということがよくわかる。しかし期待していた流れではなかった

ひりつくような緊迫した戦いやあっと驚くような大どんでん返し。ミステリーさながらのトリックなどという子供だましは一切ない。作中の吉村と同じように小細工なしで引かれたレールの上をまっすぐ、たまにわき目をふるがそれでも最初の予定通りにしっかりとストーリーを進めていくような強さを感じた。感動するエピソードをちりばめ、泣かせようとする。しかし僕自身はそのまま正直に泣くことはできなかった。

やはり、期待しているものの違いが大きかった。このまま平坦な終わりではなく、激しい戦いを求めていた。大きく歴史から外れるとはいえ、斉藤一ともう一度命のやり取りをやってほしかった。なんとなくだが、物語のピークが上巻に集中しているようで、下巻は後日談的なことに終始しているような気がした。

前半からくらべると少し期待はずれな感はあった。



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