マークスの山 下 


2007.10.15 硬い、硬すぎる 【マークスの山 下】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
複雑な人間関係が入り混じった事件がとうとう解決を迎える。上巻から引っ張られた疑問はすべて解決できた。しかし、それが壮大なカタルシスを得ることができたかというと、疑問だ。硬派で一つの緩みもない真っ直ぐな作品であることには間違いない。まったく隙がないと言っても良い。上巻で張り巡らされた伏線は、すべて本作で解決されている。何の問題もないはずなのに、なぜかしっくりこない。もしかしたら理詰めで遊びがないために、疲れてしまったのかもしれない。あっと驚くような結末ではないが、納得のできる終わり方だ。

■ストーリー

殺人犯を特定できない警察をあざ笑うかのように、次々と人を殺し続けるマークス。捜査情報を共有できない刑事たちが苛立つ一方、事件は地検にも及ぶ。事件を解くカギは、マークスが握る秘密にあった。凶暴で狡知に長ける殺人鬼にたどり着いた合田刑事が見たものは…。

■感想
濃密な内容。1ページにぎっしりとつまった文字。堅い言葉づかいに、登場人物たちの岩石のような堅い心。すべてが硬派で何があっても崩れることのない、しっかりと形づくられているようだ。そんなカチカチの本作を読んでいると、正直疲れてしまった。終盤には事件のすべての謎が明らかになり、あとは犯人を追い詰めるだけという状況になる。そこまで読むと「あー、やっと終わるんだ」となんだかよくわからないホッとしたような気持ちがわいてきた。

本作に登場する合田刑事を含めた警察関係者たち。彼らの発する言葉一つ一つにピリピリした緊張感を感じてしまう。何日も続けて徹夜をし、事件に挑む。その流れが、そのまま読み手に伝わるように、ぐったりと疲れてしまった。じっくりと読み進めたのだが、息を抜く暇がない分だけ、
終始緊張して読むしかなかった。一服の清涼剤になるような、ちょっとしたお遊びキャラクターが一人でもいれば、又違った印象をもったのかもしれない。

映画化もされた本作。映画でこの雰囲気がどこまで表現されているか気になるところだ。ミステリーとしての評価が高いのだが、トリックがそれほどすばらしいと感じることはなく、犯人を含めた登場人物たちに新しさを感じることもない。しかし、全体の雰囲気と警察内部の軋轢の行く末を見たいために、ひたすら読み続けたというのはある。ある程度、ミステリーを読みなれていないと本作は辛いだろう。

トータルで考えると、本作は予想よりも読みにくく、ミステリーとしての面白さを感じることはなかった。



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