暗いところで待ち合わせ


2007.12.13 せつなすぎる 【暗いところで待ち合わせ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作せつなさが込み上げてくるようなすばらしい作品であり、作品の性質として映画化にも向いていると思う。原作と大きな違いはなく、ストーリーも原作に沿った流れとなっている。盲目の女の子を主演の田中麗奈が好演し、相手役のアキヒロも原作とは設定が異なるが、良い味をだしている。もともと原作のストーリーが良くできているので、映画化しても十分楽しめる作品となっている。原作のせつなさをどこまで表現できているのか、文章から映像へ変わると印象も大きく変わってくる。やはり、原作に勝てる映画はなかなか存在しないのだろう。

■ストーリー

事故で視力を失ったミチルは、父と二人暮らしだったが、その父も病で亡くなり、ひとりぼっちになってしまう。気丈にふるまうミチル。そんな彼女の家に、家の前で起きた殺人事件の容疑者のアキヒロが、しのびこんできた。ミチルが目が不自由だとわかっていて家宅侵入をしたアキヒロは、ミチルに見つからないように気を配りながら、その家にいついてしまう。しかしミチルは人の気配を感じるようになり…。

■感想
せつない。盲目のミチルが非常に健気でかわいらしく感じてしまう。ハンディキャップを背負っているというのもあるが、ゆっくりとした動作と、父親のコートを着て外出する姿。その弱弱しいしぐさを見ると、守ってあげたくなってしまう。客観的に見ると、不幸の真っ只中にいるはずのミチルが、ひっそりと生活を続け、非常に狭い世界の中で生きている姿は、なんだか無性に心打たれてしまう。

ミチルの家へ突然押し入ったアキヒロ。このアキヒロというキャラクターだけは、原作と随分設定が異なっている。ある種の社内イジメのようなものに直面しているアキヒロ。まず思ったのはアキヒロの行動がイジメを誘発しているようにも思えた。実直で一本気な性格というのは良くわかるが、あまりにまっすぐすぎて、周りと溶け込めず、自然にういてしまう。良くあるパターンなのかもしれない。そんなアキヒロが、ミチルに対してだけ、開かない心の扉をゆっくりと開いていくのが、はっきりと感じられた。

ミステリー的なできもすばらしいと思う。なぜアキヒロはずっとミチルの部屋にいるのか、そして、何を見ているのか。それらにはすべて理由があり、登場人物たちにもすべて理由がある。不自然なキャラクターや、不快な登場人物は一切いない。アキヒロをイジメるキャラクターも、悪いキャラクターとして描かれてはいるが、不自然ではないし、それほど嫌悪感をもつこともない。

いじらしいミチルの姿を見て、せつなく感じているのか。それとも、二人の境遇を考えせつなく感じているのかわからない。ただ、ミチルの演技がそれらに拍車をかけているのは確かだろう。



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