国境の南 太陽の西 


2007.2.13 煙に巻かれるような恋愛小説 【国境の南 太陽の西】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ちまたに溢れている恋愛小説とは一味違う。一味というか根本的に違う。”しばらく”がどのくらいの期間をさすのか、そして”たぶん”にはどのような意味が含まれているのか。恋愛に絡めながら巧みな言葉遊びのようなものまで含まれている。基本的には「僕」が経験する恋愛とそれに付随する出来事が読者を煙に巻きながらも淡々と語られている。一般的に容姿とは別の部分で強く引かれる部分、このあたりの描写は多少共感できる部分ではあったがそれ以外はなんだか夢か幻のように感じてしまった。

■ストーリー

今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう―たぶん。「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて―。

■感想
ノルウェイの森と比較していいものなのか、雰囲気は似通っているが密度は明らかに本作の方が薄い。一人の男の少年期から大人になるまでの恋愛模様が描かれてはいるのだが、ドロドロとした恋愛ではない。一般的に考えられているものとは違う、高いレベルでの恋愛のように感じてしまった。容姿とは関係なく、その人にしかない自分にぴったりとはまる何かというものがテーマとなっている。それは現実世界では感じることのできない部分なのかもしれない。

中盤から年齢がぐっと上がり中年期での話しとなるのだが、中年期の恋愛というものがどんなものでどんな感情が働いているのかよくわからない。しかし少なくとも本作の「僕」が感じるような恋愛はまったく想像することができない。何不自由ない幸せな生活をすべてなげうってでも突っ走りたい恋愛というのもあるだろう、そして衝動的にそうなるのもわかる。しかし、本作の「僕」のような行動はなかなかとることができない。

読み終わってからは、これはいったいなんだったのか。結局何が言いたかったのか、
文章を読む心地良さというものは味わうことができたが、ストーリー的にはオチがない。さらには後から内容を思い出すのも怪しいかもしれない。それほどある一点に関しては強烈な印象を残すが、その他の部分ではほとんどその印象が薄くなってしまう。



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