恋人よ 下 


2007.1.30 不倫とは違う何か 【恋人よ 下】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
上巻で最後まで明かされなかった子供の血液型。それは予想通り波乱を呼ぶ血液型だった。この流れで行くと、それぞれの夫婦崩壊なくして物語を進められないだろうと予想していた。そしてそのとおりの展開となった。ただ少し意外だったのは愛永の病気が夫婦の足かせとなるかと思ったが、そこは最後の締めになっていた。冷静に考えると粧子が全ての元凶のような気もするが、物語に蔓延する恋愛テンションの中では霞んでしまう。誰が悪いという犯人探しを超越した、この二組の夫婦の強固な繋がりを感じることができた。

■ストーリー

航平と愛永は、郵便局の私書箱を使って手紙のやりとりをはじめた。一方、航平の妻・粧子のお腹はどんどん大きくなり、嵐の夜、ついに女の子を出産する。だが生まれてきた子供は航平の子ではなかった。そしてその父親とは…。運命を引き受けた大人たちが、つまずきながらも、狂おしいほど人を想う。

■感想
純粋に人を愛し、その結果裏切られようとも繋がりを保っていく。嵐の前の静けさのような上巻に比べ、下巻はその全ての伏線をいっぺんに吐き出したように様々な出来事が待っていた。二組の夫婦だけでなく周りの人間たちも巻き込む激しい恋愛模様。これは誰の責任で誰が一番悪いかという犯人探しをしてしまいがちだが、そんなものは全て打ち消してしまう雰囲気がある。

子を持つ親の気持ち。本作はこの親の気持ちというのがポイントになっているが、どうもその辺があまり理解できなかった。これは親になれば判ることなのだろうか。ある意味二組の夫婦を崩壊させるきっかけとなった子供。今後の生活や世間体を含めた全てを投げ出してでも得がたいモノなのだろう。

最後は愛永の手紙で締めくくられている。この手紙はいかにも泣かせようという雰囲気が漂っている。それを感じると、そうならないように自分の心にガードをかけるが、そのガードを掻い潜りながら巧みの
人の心をくすぐる何かがある。泣きはしなかったが、ジーンときてしまった。

本作は不倫とも違い、普通の恋愛とも違う。背徳な雰囲気はありながらも清冽な印象もある。いろいろな思いが入り混じった作品であり、それは読者の受け取り方でどうとでも変わるのだと思った。

上巻へ



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp