翳りゆく時間 


2008.1.29 好みの作家が見つかるか? 【翳りゆく時間】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
様々な有名作家の作品が収録されている本作。確かに今まで名前は聞いたことがあるが、読んだことのない作家の作品が読めるのはよい。普段ならば、決して手に取らないような作品も中には含まれている。もしかしたら、本作をけいきにして、食わず嫌いを払拭できることになるかもしれない。しかし、実際には特別面白いと感じるような作品に出会うことはなかった。三島由紀夫など超有名でありながら、一度も読んだことがなく、今回初めて読んだのだが…。まあ、作者の別の作品を積極的に手に取ることはないだろう。新しい好みの作者を見つけるには良いのかもしれないが、あたりはずれは大きい。

■ストーリー

未来のない愛に苦しむ女は夜明けに浄化される。過去を精算するために、男は異国へ旅立つ。姉の夫に恋する女はパラダイスを夢見る。迷いを隠して、青年は旧友との再会に臨む。伝説のマダムは秘密を抱いて孤独に逝く―。秘めていた想いが高まって溢れ、やがてほの暗いメランコリーに昇華してゆくまでを、小説の名手七人が鮮やかに描く。甘苦い味わい、大人のための傑作アンソロジー。

■感想
本作に収録されているのは超有名作家といわれる人たちばかりだ。何かしらの有名な賞を受賞しており、名前を挙げれば、読書家ならば誰もが知っている名前なのかもしれない。今まで特別手に取ったことはなかったが、これを機会に、自分好みの作家に出会えるかもしれないという楽しみがあった。本作は浅田次郎が何かしらの感銘を受けた作品ばかりが収録されている。ということは、それなりに優れた作品たちなのだろう。しかし、それが自分に合うかはわからない。

結局すべてを読み終わり、印象に残っているのは浅田次郎の作品だけだった。小説の名手たちが描いた作品は、確かに独特な雰囲気はある。特に北方謙三の作品は最近良く読む旅ものに近い雰囲気を感じたので、それなりに楽しく読むことができたが、強く印象に残ることはない。三島由紀夫にしても、初めて読むのだが、どうもすんなりと受け入れることができなかった。これが文章として、または文学的には優れているのかもしれないが、楽しんで読むことはできなかった。それはつまり、自分には合っていないということだろう。

有名作家の中で、結局浅田次郎の作品だけが印象に残っているのは、やはり自分の好みだからだろう。オカマをテーマとした作品で、家族に対しては徹底的に男を通したというその展開は、どこかで見た気がした。時期的には本作の方が先なのだろうが、どうもメゾン・ド・ヒミコの映像を思い出した。おそらくまったく関係ないのだろうが、オカマが家族に素性を隠しながら二重生活をするという仕掛けは相当インパクトがあった。

新たに好きな作家を見つけるには、本作のようなアンソロジー物はいいのかもしれない。ただ、かならず当たりがあるとは限らないが…。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp