犬の人生 


2008.6.14 かなりのとっつきにくさ 【犬の人生】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
アメリカを代表する詩人の小説集。詩人の小説、それも翻訳モノとあっては、かなりとっつきにくいだろうというのは容易に想像できた。ただ、一作品が非常に短かったのでそれほど読みにくさを感じる前に終わってしまったというのが正しい感想だろう。あるときは精神世界を描き、またあるときは神話のようにちょっとした教訓を含めた作品であったり。何かはっきりとした目的のようなものを感じることはできないのだが、一つ一つの言葉の重みというのは感じることができる。精神世界を描いていたり、わかりにくい描写だったり、とっつきにくい部分は多々あるが、そこを乗り越えると、新しい世界が見えてくるような気がした。

■ストーリー

「実を言うとね、僕は以前は犬だったんだよ」「犬ですって」「うん、コリーだったんだ」―とことんオフビートで、かぎりなく繊細、村上春樹があらたに見出した、アメリカ現代詩界を代表する詩人の異色の処女“小説集”。

■感想
異色と言えば異色なのだが、村上春樹訳の海外小説を何作かすでに読んでいるために、それほど突拍子も無いという印象はなかった。独特な文体と、頭にイメージするのが困難な、精神世界。かと思えば、昔話に出てきそうな神話のような作品であったり、現実的な生活を描いた作品もある。一貫したテーマというものは特に感じることができないので、読みやすく理解しやすい作品もあれば、まったく何が言いたいのかわからない作品もある。

村上春樹が訳しているとあって、ある程度ベースというものはある。ただ、訳者は原書の文体をそのままの雰囲気を日本語に変えただけというような訳し方を好むようで、読んで難しく感じたり、わからなく感じるのは原書でも同じような印象をもつのだろう。だとすると、この詩人がアメリカでは相当評価が高く、多くの人に読まれているというのは、想像がつかない。一般人にそれほど好まれるような作品のトーンではないように思えるのだが…。本作の魅力をまだ、一ミリもわかっていない証拠かもしれない。

よく言われるのは、難解な文章を繰り返し読むことによって、その文章のリズムや趣きが伝わってきて、心地よく感じることがある…らしい。自分の中ではリズムはわかるのだが、文章の趣というのはいつまでたっても理解できない。今後も簡単には理解できないだろう。小説を読む楽しみ方はいろいろとあると思うが、内容にはそれほどこだわらず、文章のリズムだけをしっかりと読み取って心地よい感覚を味わうのが正しい楽しみ方なのかもしれない。

なかなかとっつきにくいかもしれないが、挑戦してみるのもいいかもしれない。



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