2008.1.31 絵本的作品 【羊男のクリスマス】
評価:3
■ヒトコト感想
羊男シリーズと呼ばれている本作。中身がどんなものか、一切予備知識なしに読んでみた。予想外の絵本調に驚き、そして相変わらずのよくわからない雰囲気。これが村上春樹の真骨頂だといわれれば何も言えないが、かなり驚いたのは間違いない。普通の小説と思って読み始めただけに、衝撃はかなりのものだ。この作品の世間一般での評価がどうなのかも気になるが、自分の中では決して高くはない。求める物が根本的に異なっている。本作を読む対象者に自分は入っていないのだろう。羊男という名前につられて読むのは間違った読み方だったようだ。
■ストーリー
聖羊祭日にドーナツを食べた呪いの為クリスマスソングが作曲できない羊男は、穴のあいてないねじりドーナツを手に秘密の穴の底におりていきました。暗い穴を抜けるとそこには――。なつかしい羊博士や双子の女の子、ねじけやなんでもなしも登場して、あなたを素敵なクリスマスパーティにご招待します。
■感想
羊男のシリーズはいくつか読んだことがある。それらは、特別気に入ったわけではないが、まあ、ある種独特な雰囲気がある作品だという思いがあった。シリーズを読み続けた手前、同じ羊男の作品ということで本作を手にとったのだが、まさかこんな雰囲気のものだとは思いもよらなかった。小説というよりは、絵本に近い。独特なカラーの絵と文体。その内容には、はっきりとした目的がなく、ただ、そこに存在する羊男の不思議世界へ入り込むべきなのだろう。どうも、そこまで入り込むことができなかった。
内容とは別に、単純に羊男が食べているドーナツが食べたくなった。読んだときに腹が減っていたというのもあるが、挿絵の効果もあいまってドーナツのふんわりやわらかで、甘い味が口の中いっぱいに広がるような気持ちになった。食べ物としてのドーナツと作品上での意味合いがどのようにあるのかもよくわからないが、ドーナツという言葉は腹をすかした者にはとても魅力的に感じてしまう。もしかしたらドーナツ屋などに本作を置けばドーナツの売れゆきがよくなるかもしれない。
挿絵と文章でこのボリュームであれば、かなり簡単に読むことができる。これといった余韻もなく、あっさりと読める反面、その内容が頭に残っているのは、2,3日が限度だろう。難しい小説を読んで頭が疲弊した人にはちょうど良いのかもしれない。
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