日出る国の工場 


2008.3.26 大人の社会見学 【日出る国の工場】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
確かに楽しい工場訪問記だ。小学生のころに社会見学として地元のパン工場を見学したことを思い出した。実際にはパン工場の中身よりも、最後にお土産としてもらえるパンがうれしかったという記憶しかないのだが。おそらく今、工場見学をすれば、より楽しく見学することができるかもしれない。大人になってからの方が楽しめるということもあるのだろう。それを実際に実行しているのが本作だ。大人の目線で素直で忌憚のない意見を述べる作者。そして、ヘタなのだが、どこか味のある独特の絵。これらがあいまって非常に楽しく読めるエッセイとなっている。ただ、時間的な古さはいかんともしがたい部分だ。

■ストーリー

ある時は牛に蹴飛ばされそうになりながら「牧場」を歩き、またある時は新郎新婦になりきって「結婚式場」を取材する。その他、「人体標本工場」「消しゴム工場」「コム・デ・ギャルソン工場」「コンパクト・ディスク工場」に「アデランス工場」と、好奇心で選んだ7つの〈工場〉を、自称ノン・フィクション作家、春樹&水丸コンビが訪ねます。イラストとエッセイでつづる、楽しい〈工場〉訪問記。

■感想
「人体標本工場」や「消しゴム工場」などは今見てもそれほど変わらないのかもしれないが、「コム・デ・ギャルソン工場」や「コンパクト・ディスク工場」などはすでにどうなっているのかわからない。CDが廃れているのは間違いなく、今ならば、DVDさらにはブルーレイ工場といったところになるのだろうか。時代の変性を感じる本作であるが、その時代の最新テクノロジーではあるので驚かされる部分はある。

作者独特のユーモアが含まれた文章や、少し卑猥でありながらもニヤリとできるような雰囲気はすばらしい。特別相手をけなしているわけではないのだが、どこかシニカルな見方をしているというのを感じてしまう。「結婚式場」のくだりでもそうだが、すでに一般化した物事に対して、作者なりの捻くれた見方と、ヘタウマな絵で微妙な雰囲気を伝えてくれる。もし、自分が取材される立場で、この絵で人物画を描かれたとしたら、多少の憤りはあるにしても、笑って許してしまいそうな雰囲気もある。

ノンフィクション作家という触れ込みで、思いっきりフィクション作家である村上春樹が真実のみを語っている。工場という一般人にとっては未知の領域をわかりやすく、そして面白く語ってくれる。という流れなのだろうが、ヘタウマな絵、特に村上春樹がTシャツにショートパンツ姿というビジュアルに一番の衝撃を受けたかもしれない。時代的なことがあるにしても、小学生じゃないのだからなどと余計なことを考えてしまった。

作者のエッセイは面白いというのはわかっていた。独特な絵が加わるとさらに面白くなるもんだと、ちょっとした衝撃だ。



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