2007.8.19 原作ほどの濃密な感動はない 【変身】
評価:3
■ヒトコト感想
原作はとても印象深く、心に残る作品だった。脳移植で変身とくれば内容は容易に想像できるだろう。それがわかっていながらも、原作は最後まで心を引き付けはなさなかった。すばらしい原作をどのように映画化したのか。主演二人の演技はすばらしく、二人が仲むつまじくすごす姿は心が洗われる。それがだんだんと崩れていくシーンも悲しく心打たれた。しかし、全体的にはなんだか随分退屈なモノになってしまった、という印象が大半を占めている。誰もが考えるストレートな展開、そして、捻りのない登場人物たち。いくら俳優の演技がすばらしくても感動することはできなかった。
■ストーリー
ある事故に遭い、脳移植を受けた青年と、その青年に常に変わらぬ愛を捧げる女性との切ないまでのラブストーリーを描く。事故の後、長い眠りから覚めた純一はある夜、悪夢にうなされ、自分ともう一人の自分が自身の中に存在することに気づくのだが…。
■感想
蒼井優に玉木宏、二人の演技はすばらしかった。特にそれほど綺麗というわけではないが、相手に心から尽くすメグの役を演じた蒼井優はすばらしかった。物語の流れ上、メグが悲しみの中、ベッドの中で純一と背中合わせになり泣くシーンは心打たれてしまった。もちろん純一役の玉木宏もすばらしく、変身後はまったくの別人と思えるほど、迫力があった。
二人の幸せな部分と、純一が自分の変化に戸惑い、変わっていく姿の対比は見ていて心が痛くなった。結局はメグの悲しみにひきづられたような感じで、それ以外の純一と外との繋がり、特に医者との繋がりの部分はほとんど何も感じることなく、ただぼんやりとストーリーを追っているだけのような気がした。何が悪いという明確な指摘はできないが、原作を読んだ時ほどの感動を味わうことはできなかった。
安易な恋愛映画と捉えるのか、それとも科学ミステリーと捕らえるのか。ミステリーとして考えると少し弱く、恋愛映画としては余計な部分が多すぎるように感じる。結局はどっちつかずで、そのまま流されたような感じだろうか。この出演者であれば、もう少し二人の関係に焦点を当てて、変身というミステリー部分を削っても良いのではないだろうか。ストレートな作品だけに、ミステリー的な驚きを期待できないならば、それも一つの手だったように思った。
原作との比較はタブーだと思うが、原作の濃密な雰囲気を少しでも出せれば、また違った印象をもったかもしれない。
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