ハサミ男


2007.1.4 映像化不可能の原作を 【ハサミ男】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作はまさにTHEミステリーという感じでまんまと作者の意図通りに騙された作品だった。これを映像化するのは不可能かと思われたが、ある意味別の方法でここまでうまく面白さを表現するとは思わなかった。昔の二時間ドラマ風な映像と、ノイズ交じりの効果音。チープな部分もあるがそれが逆にいい雰囲気をだしている。主演の二人も良い味をだしており、特に麻生久美子は今までのお嬢様な雰囲気からはずいぶんかけ離れているが、強烈なインパクトを残している。おそらく原作を読まずに本作を見るとより楽しめるだろう。途中でタネに気づくかもしれないが、そこからどのように展開していくか、その部分も楽しめるかもしれない。

■ストーリー

美少女の喉に研ぎ上げられたハサミを突き刺す連続猟奇殺人鬼“ハサミ男”。しかしあるとき、ハサミ男の犯行をそっくり真似た手口で新たな殺人事件が起きてしまった。知夏(麻生久美子)と安永(豊川悦司)は、その犯人像を追い求めていくのだが……。

■感想
原作を忠実に再現することはおそらく不可能だろう。そう考えると、この手法が一番なのかもしれない。映像化ならではの騙しといってもいいかもしれない。逆にいうと本作のパターンを小説で表現するのはなかなか難しいが不可能ではない。ハサミ男というタイトルからも騙しに入っているが、独特のチープな雰囲気と、奇妙な音楽で全体的な雰囲気をチープにしている。それがまた絶妙にマッチしているので、騙しに気づくのを遅らせる効果があるのかもしれない。

主演の二人の存在感があまりにも大きい。特に麻生久美子は今までのイメージから一新している。お嬢様なイメージから一気に汚れ役にシフトしたが、これが本作の騙しに効果的な役割をはたしている。豊川悦司の無表情だが有無を言わさぬ迫力と、おどおどしながらも何かに抵抗しようとする麻生久美子。原作では読み解けなかった部分が映像化されると感じることができた部分もある。何度も自殺を繰り返す知夏。この場面は文章よりも映像化されたほうが衝撃は大きい。タバコのニコチンを煮詰める場面は見ていて吐き気がしてきた。

原作では不明確な部分を映像化するうえではわかりやすくされている。安永が普通の人物であるのは映像化でのトリックとしては必須だったのだろう。これが原作どおりに医師として白衣を着ていれば本作は成立していない。そんな感じで原作のわかりにくい部分が補完され、間口の広い作品となっている。原作のマニアックさを残しつつ誰にでもわかるようにする。これは加減が非常に難しい部分ではあるが、僕は本作はそれに成功していると思った。

技術的にはいくらでも高度にできるが、あえてアナログ的でチープな雰囲気を出そうとしているようにも感じた。一昔前のホラーを見ているような感覚でもあり、それがこの上なく似合う作品だ。



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