半島を出よ 上 


2007.12.30 現実に起こりうる未来? 【半島を出よ 上】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
未来の日本を予言するかのような本作。実際にシミュレーションの役割をはたしているのかは微妙だが、ここまで綿密に書かれると、意識せずにはいられない。今、朝鮮が反乱軍を日本に送り込んできたら。その時、日本政府はどんな対応をするのだろうか。リアリティがあるのだが、実際に差し迫った問題として認識することはできない。これが、まあ、俗に言う平和ボケというやつなのだろう。何かがあっても、アメリカが助けてくれる。政府の偉い人がなんとかしてくれる。そんな他力本願な気持ちがどこかにあるから、本作を真に受け止めることができないのだろう。リアルに受け止めなければいけないと思わせる何かが、本作にはある。

■ストーリー

北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟。

■感想
現実に起こりうることを、リアルに表現している本作。経済的な動向が本作のとおりになるとは思わないが、北朝鮮の反乱軍が攻めてくるくだりは、ありえなくもないと感じてしまった。もし、そんなことが起きたらどうなるのだろうか。本作のように、真に迫った問題として、リアルに認識することができるのだろうか。おそらく、どこか中東の問題のように、対岸の火事のような気分でメディアを通して認識するのかもしれない。

多数の登場人物それぞれには、綿密な個性付けがされている。しかし、あまりに多いために、それらをしっかりと頭に入れることができなかった。特に反乱軍のメンバーは、名前がカタカナということと、なじみのない名前なため、読んでいてまったく個性を把握することができなかった。ただ、一様に機械的で、無機質な無表情をした屈強な男たちというようなイメージしかない。想像したのは、米兵とはまたちがう、アジア人独特の切れ長の目が印象的な兵士だ。

本作をリアルに感じさせるもう一つの要因は、日本政府の対応ぶりだろうか。事なかれ主義で、能力が高いものが総理になるわけではない現実。確実なリーダーシップをとることができない首相ならば、現場の混乱は容易に想像できるだろう。今、現時点で同じようなことが起こっても、本作となんら変わらない対応に終始するような気がする。そして、国民たちは、非難しながらも流され、最終的には楽なほうに事態は流れていくような気がする。そんな環境であってもしょうがないと、
飼いならされた日本人は思うのだろう。

経済崩壊のくだり以外は、ものすごくリアリティを持って読むことができた。ここまで広げられた大風呂敷を、最後はどのように不自然なことなく収束させるのか。すべては下巻のできにかかっていると言っても過言ではない。

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