ハゲタカ2 上 


 2008.4.16  きな臭い買収戦争 【ハゲタカ2 上】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
前作を読んでいなければ楽しめない作品。ハゲタカとはどんな存在で利益優先の考え方はバブルが崩壊した日本では必要なことだという思いがあった。そして、前作で一番感じた、買収した後はどうするのかということが本作に続いているようだ。利益優先の外資というイメージは相変わらずだが、本作で最も感じたことは、金額がでかくなればなるほど、闇の力が働き、人の命や犯罪のにおいがぷんぷんとただよってくるということだ。何が企業にとって一番大事なのか、会社は誰のものなのか、ちょっと前に話題になったホリエモンを思い起こさせるような流れだ。あまりに規模が大きすぎて現実感がわかないが、日本のどこかで同じようなことが起こっているのだろう。

■ストーリー

「いつか日本を買収(バイアウト)するーー」。1年の海外放浪を経て、帰国した鷲津政彦(わしづまさひこ)が、まず標的(ターゲツト)に定めたのは、繊維業界の老舗(しにせ)「鈴紡」。一方、鈴紡は元銀行員の芝野健夫(しばのたけお)を招聘(しょうへい)し買収防衛を図る。その裏に、かつての芝野の上司で、UTB銀行頭取、飯島の思惑があった。激烈な買収戦争で最後に笑うのは?

■感想
前作よりもさらにきな臭く、闇を感じる描写からスタートする本作。前作が謎めいているが裏に何か秘策があるように感じられた鷲津だが、今回は、逆に見えない力に必死に立ち向かうという図式に感じられた。明らかに現実の企業を意識させるような企業が登場し、様々な利害関係者が複雑に絡み合う争い。現実にもこのようなことが起こっていたのだろうか?一般人には想像できない世界の話を、物語としてしっかりと構成されており、ハラハラドキドキ感を楽しむことができる。

熾烈な買収戦争は規模が大きすぎてイメージがわかない。しかし、チームを立ち上げ、今から熾烈な買収戦争に突入するといったくだりは、かなり熱くなる。様々な専門家を集め、それぞれの得意分野で力をはっきし、ボスは黒幕と熾烈な心理戦を繰り広げる。本作には癖のありそうな老人たちが何人か登場してくる。これらは現実にも老害として大きな影響を及ぼしているのだろう。国民的企業が次第に腐っていき歴代の社長は平穏無事に任期を終えることだけしか考えない。なんだか、そのままモデル企業の内情を暴露しているようだ。

前作に輪をかけてきな臭い展開が予想できる本作。下巻ではもしかしたら何人か犠牲者がでるのかもしれない。本作の主人公である鷲津であっても、真に企業のことを考えているわけではない。根底には自分たちの利益を優先している。それは、読者としてはどの立ち位置で読むべきか、悩む部分でもある。いちサラリーマンとしては真に企業のことを考えてくれる救世主役を鷲津に期待してしまうが、決してそうはならないだろう。これが悲しい現実なのかもしれない。

結末はハッピーエンドではないと予想できる。恐らく下巻では現実の結末に沿った流れになるのだろう。



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